匿名ゆき 2014-11-23 17:15:10 |
通報 |
偏執
It's about time I broke into your world.
昔から不思議に思っていたが、漸く謎が解けた。
私は至って一般的な一般人であり
普通の健常者と同じく味覚に障害があるわけでもない。
だから、私は私を窮めて典型的な人間だと思い込んでいたのだ。
だが、そんな私にも同じ一般人のある言動が理解できなかった。
全身のあらゆる器官を用いても、私には水道水を『おいしい』と感じられたことがない。
なのに奴等はさも当然の如く、蛇口から湧き出る水を飲み『おいしい』と言うのだ。
小学校、中学校、高校…
理解できないものが身近にあるのは恐ろしい。
―私は一般人ではないのか?
いや、そんなことはありえない。
もしかしたら、奴等は私を一般人に近付かせないために
嘘をついて戸惑わそうとしているのではないか。
私は騙されないぞ、私が一般人でなければ誰が一般人だというのだ。
私はいつも蛇口の前で疑問を投げかけていた。
『おいしい、とは言っても、その、雰囲気でな』
『潤いは味覚とは別だし、でも兎に角おいしい』
誰が聞いたって、その場しのぎの嘘にしか聞こえない。
人を騙すならもう少し上手くやれと言いたいところだ。
『頭の螺がはずれていませんこと?』
『お前、普通じゃないな』
煽りとは自分の思い通りにいかない事態が発生したときに
論点をすり替えて、相手を操作しようと目論む行動なのだ。
なんて単純なやつらなんだ!
何とでも言いたまえ、お前たちがどんなに擬態を装ったって一瞬で見破れるんだからな。
普通と普通でないことを見分けられるようになってからは
世の中は人を騙すようにつくられているのだと判断できるようになった。
例えば信号機、なんとも惨い殺戮機械だろう。
色で危険度を表現しているようだが、役に立つとは言いがたい。
青色によって油断を誘い、死神の交差点を生み出しているのだ。
最近じゃ、事故を記録に収め、不幸を観察するために監視カメラの取り付けられた信号機も多い。
こんな非人道的な奴が、一般人であるとは言えないはずだろう。
だから、今度は私が奴等を欺いてやったのだ。
それも、なるべく分かりやすく、一般的行動と称するいつでも誰でも出来る偽りの行動によって。
〜19歳の少年による殺人の自白〜
…迷宮入りとされていたトリムマートの従業員3名
店内にいた客2名が刺殺された事件を覚えているだろうか。
二年前に起きたこの事件は世間を不安にさせていた。
凶器が被害者に突き刺さったままであり、指紋も残っていた。
すぐに解決出来ると思われた事件であったが、まったく進展なしに捜査は難航していた。
しかし本日未明、この事件の犯罪を遂行したとして19歳の少年が自首してきた。
少年はこのように供述している。
「私は一般人と称するもの達に非一般的事象を一般的事象として教わったため
このような『一般的行動』を引き起こした。」
警察は精神鑑定も考慮して少年の対応を検討している―。
私が閉じ込められるのは、ここではないはずだ。
何故こちらなのか。
ああ、私は普通ではなかったのか。
普通に固執し過ぎる必要はなかったのに、奴等は普通になれと言う。
誰も知らない探し物を、私に無理やり探させて
内側は悲鳴をあげていたのだ。
トピック検索 |