ブラック 2014-10-18 07:11:51 |
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【ツンデレ女とクーデレ勝り】
カゲロウデイズの攻略も終わり、早三年。
私榎本貴音はいつも病と戦いながら、生活をしている…と言うわけではなく、病院の先生の頑張りもあり私の体は普通になった。
これでゲームがやり放題、と思ってゲームをしていたら木戸率いる元メカクシ団が、私の家まで押し掛けて懐かしのアジトに連れて行かれる。
………ゲーム。
遥はコノハで居たためか、体は大分丈夫になっていて発作も起こさなくなり、結構遠出もやりやすくなった。
相変わらずよく食べる……。
三年も経っているので学校にも行っていなく、ダラダラと家にこもってゲーム、ゲーム、ゲーム…とゲーム三昧をしていた。
死んだ人も帰って来ているので、時々文乃ちゃんと伸太郎と遥でバーベーキューをしたりしている。
そして今日もキドこと、木戸つぼみちゃんに家から連れ出されて、メカクシ団アジト(元)に連れて行かれる。
することはいつも同じで皆で話をする。
現在アジトにいるのは私、伸太郎、文乃、つぼみちゃん、修哉君、幸助君、マリーちゃん(漢字知らない)、桃ちゃん、ヒヨリちゃん(漢字知らない)、ヒビヤ君(漢字難しいから忘れた)、遥、と何故か黒い奴が居る。 「……で。何でコイツが居るの!!」
私は黒い奴を指さしてソファから立ち上がる。
すると修哉君がニヤニヤと「良いじゃないもうカゲロウデイズも終わったんだし」と言うので、よくつぼみちゃんがやっていたように修哉君の腹を殴る。
懐かしいな…。
「ちょっ!貴音ちゃん痛い…」
取りあえず修哉君はほっといて黒い奴に近づき、胸ぐらを掴んで「何でアンタが居るのよ!!」と怒鳴って睨みつける。
「先輩…コイツはもう悪さはしないって約束したから許してもらえないか…?」
「いくらつぼみちゃんでもコイツがやったことは…!!」
「でも三年かけて謝ってたの貴音さんも知ってるでしょ?」
つぼみちゃんに言い返そうとしていたら、文乃ちゃんがずいっと顔を近づけて言ってくる。
それはそうだけど、たった三年謝っても私たちは何度も繰り返していたのはかわりない。
しかもコイツのせいで何人もの死者が出て、皆傷ついてそれでも前を向いて生きていたのを三年謝っただけで許せない。
「でも…コイツは…遥の命まで…」
弱々しく言っていると肩に誰かの手が置かれて「貴音」と言い、続けて「僕は貴音と居れただけで楽しかったから大丈夫だよ」と言い、さらに続ける。
「それにたくさんお友達できたから…」と照れくさそうに頬を掻きながら遥は言う。
それでも私はコイツを許せなくて、俯いたまま何も言えないでいる。
「遥君だってそう言ってるか良いんじゃない?許してあげようよ」
修哉君が私に近づいていつもの様にニコニコと喋っているのが分かる。
私はため息混じりに「…遥がそう言うならいいよ」と言い、少し外の空気を吸おうと思いアジトから出ていく。
★★★
「はぁ~…」
ため息をつきながらその辺りを歩いていて、今もアイツを許そうかどうかと考えている。
さっきは遥が良いならという意味で許すことにしたが、まだ私の中にはモヤモヤが残っている。
あの頃遥に感じていたモヤモヤ感とはまた別の……。
あぁ、もう!!
考えても分からないから放棄放棄。
こんな時つぼみちゃんなら…。
「つぼみちゃんなら…」
「貴音」
「つぼみちゃんなら…」
「貴音」
誰かの声がするのは気のせいだろうか。
私は考え事をしていると幻聴でも聞こえたのかな。
いや、そんなはずは…。
「貴音先輩」
「は、はいぃ」
突然耳元で名前を呼ばれ、肩がびくっと揺れる。
ゆっくり後ろを振り返るとそこにはつぼみちゃんの姿がある。
路地裏というわけではないから居てもおかしくないけど…。
「先輩、どうしたんだ?」
つぼみちゃんはいつもフッと笑いながら私に尋ねてきて、頬が赤く染まるのが分かった。
「どうした?」
「え!?べべべべ、別に!!」
首を横に振りながら頭に手を置いて、言い訳を考えていると私のバカな頭じゃ言い訳が出てこず、アハハと言いながら目を逸らす。
「様子が変だぞ」
つぼみちゃんが私に近づいてくる。
「ど、どうしたのつぼみちゃん…?」
後ろに下がりながらつぼみちゃんから顔を逸らす。
普通の道なので人にぶつからないか、後ろを確認しながら一歩ずつ後ろに下がっていく。
「つぼみちゃん…?」
ゆっくり近づいてくるつぼみちゃんがクールでかっこよく見えて、いつもより自分の理性が抑えられなくなる。
つぼみちゃんを真っ赤にしたい。
ここだけの話なんだけど、私はつぼみちゃんの事が好きで毎日元アジトに連れて行かれるのは、意外に嬉しかったりする。
それに女子力も高いし、料理上手だし、家事も出来てモテそう…。
じゃなくて!!
私はつぼみちゃんが好きで毎日つぼみちゃんの事を考えている。
「つぼみちゃん……」
私はつぼみちゃんの腕を掴んで走り出した。
「お、おい!貴音!?」
向かった先は路地裏で人気のない路地裏に着いて、つぼみちゃんの腕を離す。
「はぁっ…はぁっ、ど、どうしたんだ、貴音?」
息切れをしながら私に尋ねてくるつぼみちゃんに、私も息切れをしているので呼吸を整えて口を開く。
「ご、ごめん!えっと…その…今言うのもあれ何だけど……私、つぼみちゃんが…」
好き。
その先が言えなくて色々なとこに視線を向ける。
無造作に置かれたごみ箱や、ビール瓶を入れてるケースが目に映る。
けど、肝心なつぼみちゃんを目に映す事はできなくて、青い空をみたり、アスファルトを見たりと挙動不振になっている。
「貴音……?」
つぼみちゃんが近づいてきて、私の頬に手を添えて「顔赤いぞ」と言った。
熱でもあるのか?という意味なんだろうけど、私にはつぼみちゃんが好きだということが知られた気がしたのでつぼみちゃんの手を払う。
「うるさい!!」
あぁ、何でいつも素直になれないんだろう。
遥に大好きって言った時も手遅れになってからだし、もっと素直になれたらきっとつぼみちゃんにも告白できたんだろうな。
「わっ悪い!」
慌てて手を離すつぼみちゃんに「ぁっ…」と声を漏らしながら、手を伸ばす。
つぼみちゃんの手を掴んで俯きながらぽつりぽつりと言いたかったことを言う。
「ご、ごめん…私…、つぼみちゃんが…つぼみちゃんのことが……」
好き。
中々言えなくて頬が赤くなっていくのが分かる。
一言好きと言えば想いは伝わる。
一言好きと言ってしまえば、つぼみちゃんに嫌われるかも知れない。
そんな葛藤を心の奥底でしているから、中々好きと言えない。
「--好きだ」
「……へ?」
つぼみちゃんから聞いたこともない言葉が聞こえた。
好き、なんてカゲロウデイズの時ですら言わなかったのに何で今つぼみちゃんは…。
「貴音、俺は貴音が好きだ…も、勿論恋愛的な意味だからな!」
照れ隠しなのか怒っているような言い方でフードで顔を隠す。
私は顔をゆっくり上げて、つぼみちゃんの顔をのぞき込んだ。
フイっと顔を逸らされて、私はムッとしたのかつぼみちゃんを壁に倒して俗に言う壁ドンをした。
「私の方が先輩なんだけど」
と強がりで強がってしまって後悔をして、つぼみちゃんの赤い顔に勝ったなんて思いながらつぼみちゃんの唇にキスを落とした。
--私も好きだよ。
【ツンデレ女とクーデレ勝り】END
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