ブラック 2014-10-18 07:11:51 |
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【なりすましゲンガー】
俺は影だ。
いつもこうやって後ろ指を指されて笑われる。
どうせあっちもこっちも、二進も三進もお前の影に隠れたままなんだ。
★★★
「おばさん、この席どうぞ」
快速電車の中、俺の目の前に座るコノハが年寄りに席を譲る。
俺は席から動かず座ったまま。
「あら、どうも助かりました」
年寄りはフフフと笑い、コノハが譲った席に腰をかける。
コノハは近くで立ちながら窓の外を見ていている。
俺はその光景を見て見ぬ振りをする。
★★★
「最近の若者達は--」
なんてよく耳にするが、なにを隠そう俺がその最たる例だ。
実は俺だって怖いものはある。
人の心の奥底なんて怖くて知りたくもない。
きっと俺は誰の目にも映っていなく、そこには存在しない。
存在するのはコノハで俺じゃない。
だから俺はコノハの影だ。
いつもそうやって後ろ指を指されて笑われて、そんな行ったり来たりの人生で、日の光を浴びないせいでコノハの影を何度も影踏みをしてるんだ。
実は寂しがり屋の口癖が「アイツみたいにはなれない」ほらな、俺とコノハの距離が開いてしまって追いつけないんだ。
★★★
独りぼっちで誰も周りに居なくて、孤独な夜を何度も明かして、部屋の隅にポツンと咲く花に勇気を貰っていた。
トントンと部屋のドアがノックされてドアが開く。
部屋に入ってきたのはコノハで「話があるの」と言われる。
「クロハ最近、僕のこと避けてる?」
--君の心の中覗いて 忘れ物を見つけました。
俺は何も言えず、ただ黙っているとコノハは俺の膝の上に座って「クロハ」と俺を呼び、首に腕を回して俺の唇にキスを落とす。
その瞬間に頬が赤く染まって、目を逸らす。
そして逸らした目を向かせるように顎を掴まれて、コノハの方に向かせられてまたキスをされる。
今度は舌をねじ込まれて口内を好きなようにされる。
「んっ…ゃ、ぁ!」
喉の奥から聞いたことの無い声が聞こえて、息も辛くなる。
コノハの肩を叩いて口を離してもらう。
「クロハ…顔真っ赤」
そう言われて顔が熱いのに気がつく。
あぁ、そうか。
俺は--
「喜怒哀楽が足りない不完全な存在だよ」
とコノハが耳元でささやく。
★★★
明日また太陽が昇って、陰と陽の日陰と日向の境界二つの境目に、やっぱり逃げ続けるだけの人生なんだ。
なりすました影がこうやってコノハの影にずっと隠れて、いつかコノハに照らされて、このまま消え失せれたらそれが良いな。
【なりすましゲンガー】END
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