ブラック 2014-10-18 07:11:51 |
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【好きの果てに見える寂しさ】
好きな人に恋人が居ると知った時の気持ちは誰が理解してくれるだろう。
きっと同じ想いをした人にしか解らないのかもしれない。
僕のこの気持ちもきっとそうなんだ。
僕に好きな人が居て、その好きな人には当然の様に好きな人が居る。
これは僕に対する欺き続けてる罰なのだろうか。
★★★
「シンタロー君」
僕は何気なくを装ってソファに座っているシンタロー君、僕の好きな人に笑いながら声をかける。
シンタロー君はスマホの中に住んでいるエネと言う人物(僕はエネちゃんと呼んでいる)と話をしている最中だった。
「カノか、どうした?」
シンタロー君は僕に視線を向けていつも通りに返事をする。
僕はその返事を何度も聞いて思うことがある。
エネちゃんと接する時と返事が違う、と。
僕はシンタロー君の隣に腰を下ろして、欺きながらいつもの様に世間話を持ちかける。
「そう言えば最近事件とか多いよね~」
シンタロー君は興味など示さないで僕のセリフにただ「あぁ」と答えて会話終了。
★★★
次の日、エネちゃんと話しているシンタロー君を雑誌を読みながら、時々何度も見つめている。
『だからご主人!!日焼け止め買いましょうよ!!』
「いらねぇよ!!!」
今は真夏という訳ではないけど、日差しが強いから日焼け止めは買っていたほうが良いと僕は心の中で返事をしている。
雑誌を読み終えてシンタロー君に話し掛けてみる。
「シンタロー君って引きこもってたからそんなに肌白いの?」
僕の質問の返答は「部屋に居たら紫外線も浴びないからな」とツッコミも何もくれず、ただ正論を言われる。
僕になにか不満があるのだろうか。
それとも――
それとも、僕なんかよりエネちゃんと話しているほうが楽しいのだろうか。
シンタロー君にとって僕はただのメカクシ団のメンバーという存在なのだろうか。
★★★
今日はエネちゃんはキサラギちゃんの携帯の中に居るらしい。
ヒビヤ君から聞いたことだけど、キサラギちゃんとマリーとセトとエネちゃんとキドで買い物に行ってるらしい。
今アジトには僕と、ヒビヤ君とシンタロー君しか居なくて各自好きな事をしている。
僕はヒビヤ君とおしゃべりをしてキド達の帰りを待っていると、ヒビヤ君は用事があるとのことでどこかに行ってしまった。
アジトには僕とシンタロー君のたったの二名。
「シンタロー君」
いつも通りに話しかけて僕は何がしたいんだろう。
僕の中にはいつもシンタロー君が居て、シンタロー君の中にはいつもエネちゃんが居る。
シンタロー君にとって僕は必要がない。
僕なんてただ欺いて笑っているだけの気持ち悪い化け物でしかない。
いつからシンタロー君を好きになったんだろう。
どうしてシンタロー君なんだろう。
時間的にはキドやセトの方が付き合いが長いのに、どうしてシンタロー君を好きになったんだろう。
姉ちゃんと一緒に居たから?
姉ちゃんが勉強を教えてもらっているから?
姉ちゃんがシンタロー君の事を好きだったから?
「…ノ、…カ、…ノ、カノ」
いつの間にか名前を呼ばれていて、僕はびくりと肩を揺らして欺いて「何かな?」とおちゃらけて返事をする。
「何欺いてんだ」
シンタロー君は僕の額をデコピンして能力を解かす。
あぁ、そうなんだ。
僕が君を好きなのは――
「痛いよ~」
「っで、オレを呼んでどうしたんだよ?」
「んー?何でもない」
ニコニコと笑っているとまたデコピンをされそうだったので、額を必死にガードすると腰を揉まれてこしょばされる。
「ちょっ!止めて!!そここしょばいから止めて!!」
涙目になりながらシンタロー君に訴えるも止めてくれず、僕はされるがままになって暫くは呼吸もまともにできなくなっていた。
★★★
最近はシンタロー君と話すのが少ない。
シンタロー君はやっぱりエネちゃんと話してて、僕が話しかけてはいけないようなオーラを出している。
シンタロー君――
君は驚くかもしれないけど――
僕は君の事が――
「大嫌い」
シンタロー君の驚いた顔、エネちゃんのありえないものを見るような顔、僕は今どんな表情をしているんだろう。
気が付けば、僕はシンタロー君の首に手を伸ばしてその手の力を込めた。
僕が君の事を好きなのは、
僕の性格を理解した上で、話をしてくれるからなんだ。
驚くかもしれないけどシンタロー君、僕は君の事が――
「――大好きだよ」
【好きの果てに見える寂しさ】END
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