ブラック 2014-10-18 07:11:51 |
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「好きになったのはお前なんだ」「え? 嫌よ」
同じ学校、家も隣同士幼馴染である。そう、文系と理系の幼馴染。だから趣味も合わないし、会話もあまり成立しないのだが、俺はそんな幼馴染の理系少女に恋をした。始まりはいつだったかなんて覚えていないが、気がついたら好きになっていた。今のこの瞬間までは!
「お前が好きなんだ!」
「え、嫌よ」
パラパラと崩れていく俺の初恋、なんてもんじゃなくもう一瞬で崩れていく初恋。眼鏡をかけた理系少女は何が悪いの? 何て顔で俺を見る。
「お、俺の……何が、嫌いなんでしょうか……?」
もはや涙目である。
「そんな事言っても『数学』は教えないわよ」
「え? スウガク?」
「来週のテスト、貴方、数学大丈夫なの? だから私に機嫌取らせて数学を教わろうとしたんじゃなくて?」
そうだった。コイツは理系だった。本嫌いだった。漫画は読むらしいが……。つまり、今の俺の告白はただのご機嫌取りにしか思われていない。それもそれで悲しい。
がっくりと項垂れてその場にしゃがみ込む。具合でも悪いのかと尋ねてくるが、そういう事じゃない。此処が自分の家なら良かったのにと二人きりの夕暮れの教室で思うしかない。だってコイツは理系だから……。
「ねぇ、ちょっと」
「イヤベツニナンデモナイデス……」
「ねぇってば」
「イヤダカラホントニ……」
「アパート通り過ぎてるわよ」
「…………」
あえて聞かない振りをしていたら、自分の家を通り越していたらしく、しょんぼりしながらアパートに向かい、階段を上っていく。高校に通うため、このアパートに引っ越して来た。幼馴染の麻衣(まい)も俺と同じ理由だ。
「じゃぁ、また明日。何かあったらいつでも来て頂戴」
302号室と303号室の前でのいつもの挨拶。何も言わず俺は302号室のドアを開けた。
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