ブラック 2014-10-18 07:11:51 |
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歳の差(BML)
「……は?」
思わず零れた気の抜けた言葉。どこから突っ込んで良いのか分からない。いや、待てよ、どうしてそう思ったのだろう。
俺の聞き間違いじゃないだろうか。きっとそうだ、聞き間違いだ。
「悪い、もう一度、言ってくれないか?」
苦笑いでもう一度言ってくれないかと尋ねると、弟――柚は俯いて真っ赤にしていた顔を、更に赤く染め小さな声で「好き」と呟いた。……冗談、だろ?
同性に告白なんてされた事は一切合切ない。逆に告白じゃないけれど兄ちゃんに好きだという事がバレた事はあった。あのとき兄ちゃん、こんな気持ちだったのか?
「なぁ、柚。冗談だよ、な? 俺を脅かそうとしてるだけで……」
そうであって欲しかった。俺みたいに間違った方向に進まず、いや結構間違った趣味はしているけれども。俺みたいな自分の兄弟を好きになるなんて事にはなって欲しくなかった。
まだ、同じクラスの超イケメンや、イケメン俳優やホストに惚れた、って言うのなら理解は出来た。
男としての仕草がカッコイイとか、声が渋くて良いとか、性格が男らしくて良いとかなら、そうかの一言で終る事ができたんだが。よりにもよって俺が好き、って言われるとは予測すらしてもいなかった。
「冗談でこんな事、言うかよ……」
更に赤く染まって、本気なのが伝わる。けれども、同性なのもあり、兄弟だというのもあるのだが、そこは俺が言ってはいけないところだろう。俺だって同じだったのだから。
だけど、俺と兄ちゃんはそこまで歳の差はなかった。兄ちゃんが21歳の時、俺は16歳だった。5歳差。俺と柚の歳の差は16歳差。歳が離れ過ぎている。
「柚、よく考えろ。今俺は32歳だ。歳の差がありすぎるだろ」
「んなの、関係ない。16でも義務教育は終ってる」
「そうだけど。俺を好きになったって、俺は凄くカッコイイ俳優に比べると全然だからな?」
「んな事じゃない! 兄貴しか、居ないんだよ……。俺の事分かってる奴」
そりゃ、自分から俺、可愛いものとか大好きだ! って言わない限り、誰も分からない。一人友人が居ただろう、お前の趣味を知っている友人が!
「お前の友人は?」
「アイツは! 訳の分かんないモン、いっぱい使おうってしてくるから、やだ」
我儘な奴だな、お前。その友人も友人だけど。
「結局柚は俺と付き合いたいのか? それとも兄弟の仲で居たいのか?」
少し間を置いてから柚が口を開いた。「……付き合いたい」と。付き合うという事は何をするのかも、分かって言っているのか気になった。
口では分かってると言うだろう。けれど、実際、本当に分かってはいないだろうから、俯いている顔を無理矢理上に向かせた。
そして、何かを言わす前に口を塞いだ。そのまま舌をねじ込んで酸素を奪っていく。
「付き合うって事は、こういう事もするって分かってるのか?」
尋ねながら、柚を押した倒す。一瞬驚きながらも俺に応えようとするのでため息を吐く。
「……分かったよ」
自分に言い聞かせるような一言だった。それでも良かっただろう。
どうせ俺の弟だ。どうなったって、俺の責任なんだろう。だったら、そういう風に転がるまでだ。
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