▽▲▽▲ 2014-08-18 14:57:42 |
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( ふと、頭に感じた柔らかで暖かな感覚。撫でられていると気が付いたのは暫くしてからで、子供の頃に戻ったような錯覚に陥りそうになる。しかし彼が求めているのは自分ではなく姉なんだ、そう言い聞かせ甘えてしまわない様にと暗い顔をすれば瞳を伏せて。次いで、抱き締める力を強めた彼を離さない様に、彼の温もりを零してしまわない様に、同じくギュッと抱き締め返してみて。すると聞こえた彼の小さな呟き。その言葉を頭の中で数度復唱してから、込み上げてくる酷く悲しい気持ちを胸に、うずめた顔をあげ少し上にある彼の目を見て驚きの表情を浮かべ。いつから彼が涙を流し始めていたのかはわからない。だけど俺はもう数度目となるその美しい涙を見やれば、彼と同じくらい苦しそうに眉根を寄せ、だが拭ってやれるほど強くもないので見て見ぬふりして「泣くなよ、もう泣くな」なんてくぐもった声で呟きまた彼の肩口に顔を伏せ自分の表情が見えない様にして。そして、彼の先程の呟きに対して「――そりゃそうだ、あんな良い女、世界中探したってそう簡単に見つかんねーよ。…俺だって、今もこれからも、きっとずっと愛してる」なんて涙声で返答して。彼のこの優しさは、きっと姉の事を想った故の義務感なんだと思う。そんな悲しいことわかってる。わかってるけど、それに縋るのをやめられない自分の弱さが惨めなくらい情けなくて、このまま全て忘れられたらなんて思う。だけどそれが恐怖でもある自分は、やっぱりまだまだ姉を今でも愛していて、きっとこの先も忘れる事なんかできないんだろう。――なんて、一人考え長い感傷に浸り続け。 )
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