▽▲▽▲ 2014-08-18 14:57:42 |
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( 遠い海を眺めると、僅かに煌めいた波を目で追い小さく息を吐いて。そしてちらりと彼の方へと視線を移せば、暗くてよく見えなかったがまっすぐと海を見つめている事だけはわかり、小さく安堵の表情を浮かべ。しかし自分の素直でないところがそうさせるのか、その顔は僅かに勝ち誇ったようでもあり、少し涙ぐんだ瞳とは対照的であり。嗚呼、此奴はこうして救われていくのかな。無理やり同調することが正解だなんて思わない。だけど、悲しいことを思い出してしまう音や、場所や、色や匂いを、乗り越えられる日が来るのかな、なんて思いながら、俺は微かに感じる風の音に意識を逸らして。――だってそうでもしないと、泣いてしまいそうだから。なんて、一人。 )
―――俺、
( 自分が手を離してから息を吐く間もない程早く、今度は立場が逆転し腕を掴まれたと思ったら勢い良く引き寄せられ、彼の大きな体にと心地良い熱に包まれて。状況に頭はついてこないものの無意識に体が彼の温度求め、先ほど受け取ったが手持無沙汰となっていたタオルをばさりと落とすと両手を彼の背に回し驚くほど素直に彼の言葉に態度で答え。――嗚呼、触れ合うだけで全てを伝えられたら楽なのに。そんな都合のいいことを考えながら、俺、と小さく言葉を漏らして。すると突如ハッと意識が引き戻され、骨ばった己の体を抱く彼の肩口をじっと見つめ。俺は姉ちゃんじゃない。顔は一緒かもしれないけど、それでも俺と姉は別物で、此奴が俺と姉を重ねる事で苦しみから解放されるのは、絶対嫌だって思ってしまった。理由を説明する事なんてできない。だけど、だからと言って突き放すこともできない自分は、やがて恥も何もかも捨て彼に縋る様ギュッと顔をうずめると、一度開いた口を閉じ潤んだ瞳をさらに潤ませ、小さく鼻を啜って。 )
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