▽▲▽▲ 2014-08-18 14:57:42 |
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面会時間ぎりぎりまでいた俺にさ、姉ちゃん、『見て、綺麗でしょ』って言ったんだ。何もないとこだったから、きっと窓の外の海か空を指して言ったんだと思う。雲に覆われてまともに星なんか見えない夜空と、反射するものがないから真っ黒で何も映さない海をだぞ、可笑しいだろ?
( 彼の謝罪を聞き何も言わずに飲み込めば、俺は瞳を伏せ一つ一つ記憶を辿り、懐かしさに思いを馳せれながら眉を下げ弱弱しく微笑みながら上記を述べ。「――全く、わかりづれー元気出してって表現もあったもんだよな。姉ちゃんにとっては、きっと窓の外の景色なんてどうでもよかったんだ。今ならわかる。」そう述べると、俺はその頃よりやや男らしくはなったが姉に瓜二つなことには変わりないその顔をあげ彼を見据えて。そして再度口を開いたかと思えば、「なぁ見て、綺麗だな」何て少し震えた声で告げ、泣きそうな顔で笑って海を指し示し。そして丁度己の陰にかぶさって海が見えないだろうからと、座りなおした彼の腕をあいた方の手で掴みやや強引に立ち上がらせ。――嗚呼、わかるよ姉ちゃん。あの頃の俺はまだガキだったから、姉ちゃんの言ってる事が良くわかんなかった。だけど俺、こんなにも姉ちゃんに優しい気持ちを貰ってたんだってやっと気づけた。…何て、もう伝えられない思いを胸に抱えながら。 )
―――アンタのそういう楽の仕方、馬鹿みたいだ。
( 昔話を終えると、先ほど何も言わずに飲み込んだ彼の謝罪に対し、間を置き多くは語らずに上記を述べて。彼は、謝罪して責められることで罪の意識を背負って生きようとでも思っているのだろうか。本人がそう決めたのなら俺は一向に構わない。だけどこんな弱弱しい姿を見せられたら、そんな彼を見捨てでもしたら、姉ちゃんに顔向けできない。俺も此奴も同じだ、同じ思いを抱えてるんだ。そう思うと、先ほど彼を掴んだ手とその腕の温かさが身に染みて、姉とよく似たその顔でふっと微笑むと、俺は求めてはいけない温もりを求めそうになり。だがそれを抑えようとしてきゅっと手に軽く力を籠めると、なんだか彼に縋っているように思えて途端に恥ずかしくなり慌てて手を離して。 )
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