【其の男一匹の獸(けだもの)也〜最近の勇者一行は以下略 outside story〜】

【其の男一匹の獸(けだもの)也〜最近の勇者一行は以下略 outside story〜】

キョウシロウ  2014-08-14 21:53:29 
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正義の味方、英雄、ヒーロー…様々な呼び方があるが、勇者一行は魔王を討伐する為に旅する集団である。
その中に一人上記の呼び方に似付かわしくない男がいた。彼らとは一線を引くその男は、三白眼の鋭い目付きは見る人を威圧し、凶悪な笑い方は聞く者を不快にさせる、佇まいは美しいもどこか危なげで、近付く者を斬り捨てるような、刀剣類さながらの鋭利な近寄り難い雰囲気、身体からは常に血の匂いを漂わせる危険な香り、腰から得物である日本刀を携えた紺色の和服の一人の男。勇者一行の中の一人、吉岡狂四郎と言う名の男。
これは彼の視点から綴られる勇者一行のお話と、彼が極悪非道の守銭奴に至るまでの、過去の回想のお話である。

個人用の小説になります。稚拙な文章ではありますが暖かく見守って頂くと幸いです。勇者一行の皆様はご意見希望など御座いましたらご遠慮なく申し付けて下さいませ!←

ではこれにて開幕致します。

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  • No.32 by キョウシロウ  2016-10-08 18:22:58 

《末永爆発組/後編》

「ダグ、キョウシロウ…俺はお前らの事を忘れない、明日までは。安らかな眠りを」
酒場から脱した勇者。一度立ち止まると振り返ってからそこらにある石を拾って『ダグとキョウシロウの墓』とマジックペンで書いてそこらに放り投げる。因みに直ぐ消える水性ペンだ。勇者は仲間の死.を悼める男なのだ。
「崇高な俺の為に犠牲になれた事は光栄だっただろ?誇っていいぞ、お前らは英雄の礎になったんだからな」
そして泣いたように笑う勇者。手を合わせて黙祷をする、三秒程。
ゴーンと二度目の破壊音。キョウシロウが殺られた音だ。
「お呼びでしょうか?」
「良く来たマイシールド!ちょっとこれ着て突っ立っててくれ」
「分かりましたが…」
現れた仲間の一人の忍者に勇者は自分の甲冑とマントを脱いで忍者に着させる。シュウは不可解な命令に思いながらもいそいそと着替える。
「じゃ!頼んだぞ」
「これがご命令とあらば。貴方様の下知を立派に果たして見せましょう」
気軽に片手を上げて颯爽と去るブレイヴを見送るシュウ。
「ブーレーイーヴ〜」
勇者が去った後にタイミング良く崩壊を始める酒場から現れる鬼神、もとい鬼嫁。地の底から響くような声色。
「へ…?」
丁度勇者を見送る為に背中を向けていたシュウの体にモーニングスターの鎖が絡み付く。
「違う…お邪魔虫」
引き寄せられたシュウの顔を見て勇者とは別人と気付いたルイちゃんはシュウの顎にアッパーカットを決める。
「ぐ、わぁぁああ!」
キラーン。シュウは空のお星様と化した。

「こっち、ですね」
鼻をすんすんとさせて匂いを嗅ぎ勇者の匂いを探すルイ。今の彼女の嗅覚は犬をも超える。勇者には逃げ場はどこにもないのだ。
「振り切った…か?」
街中をジグザグに逃げ回ったブレイヴはしきりに後ろを振り返り追っ手がない事を確認する。勇者はフラグを口にしてしまった。
「…!」
立ち止まりなんと無しに建物の屋上に立つ人影を見つけてしまう。くーる、きっと来る。
「ふふ…ふふふ。どこに行くつもりで?」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
下弦の月を思わせる口元の影を落とした顔で笑顔を浮かべるルイちゃんを見て声にならない悲鳴を上げるブレイヴ。
「俺は…まだ死.ぬわけには行かないんだ、俺の為に死.んだあいつらの為になぁぁああ!」
拳を握り締めて精悍な顔つきで咆哮を上げるブレイヴ。奴ら(忍者を除き)は別に勇者の為に死.にたかったわけてはないが、それは言ってはいけない約束だ。そして決意をしてかっこいい事を言うがあっさりと逃げる勇者は路地裏へと入る
「ぶは…」
「って、なんだァ…勇者じゃねェかァ。どうしたこんなとこで」
路地裏の角で誰かとぶつかる。長身の男は紺色のローブを纏っていた。
「ははは!神は我に生きろと言っている!」
「あ"ん?」
大声で笑い出す勇者はエドの肩を叩いて不敵に笑顔を浮かべる。怪訝な顔のエド。
「マイシールドよ、ファイト!」
「ってなんだ…うぉ!」
ぐっと親指を立てて意味深な事を言う勇者の去る方向を見て何だったんだと首を傾げるエド。しかし顔面に向けて飛んで来た鉄球を首を動かすだけで躱す。
「また邪魔者…」
「ルイじゃねェかァ…」
「排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除!」
「ぐふ…ぉお!」
鉄球を躱した事で顔の横を素通りした鎖を掴み引き寄せるエドであったが、襲撃者が良く知る僧侶であると気づく。しかし懐に飛んで来たルイの左右の拳による連打は音速を超えていた。一発打つたびに鈍い音を響かせる強打に腹部を滅多打ちにされて血反吐を吐くエドは地面へと沈む。いかに魔王と言えどルイちゃんの愛のパワーの前には無情にも殺られるしかないのだ。

「探したぞ、ラインディ」
走り回る勇者の前にやって来る人物。ハーフエルフのルシアさん。
「ルシア!丁度良かった!約束の物は!?」
「あるぞ。ほら…僕も狩りにあの山に行く予定だったからついでに取って来た」
神は勇者を見捨てて居なかった。ブレイヴはルシアへと詰め寄ると彼女はローブの中のシーツからゴソゴソと一本の花を取り出す。シーツのどこにしまっていたのか?男性読者のご想像にお任せしよう。
「鬼ごっこはもうお終いでしょうか?ご覚悟はよろしいですね」
服を返り血に染めた僧侶様(恐)がゆらりと影のように路地裏から姿を現わす。
「俺は逃げも隠れもしねえよ、ルイ」
さっきまで逃げたり隠れたりしていたのは誰だったでしょうか。不敵な笑顔で斜め45度のかっこいい決めポーズを取る勇者。
「神に祈りなさい」
「悪いが俺は無心論者なんでね」
ぶんぶんと鎖を振り回し鉄球の回転力がどんどんと速まる中、ブレイヴはダッと踏み込んでルイへと接近する。
「…これ、は?」
ルイの拳が振るわれる前に彼女の眼前には、ブレイヴの持つ一輪の花。勇者は片膝をついて花を差し出していた。
「アイリスネーション。花言葉は無垢で深い愛で貴女を愛します」
深い色の赤と青の葉が折り重なる花の名。近くの山に群生地がある事で、狩りに行くルシアについでに取って来てくれるように頼んだ物だ。
「ブレ、イヴ…貴方って人は…」
濁った色目から光を取り戻すルイちゃん。花を受け取り顔をどんどん真っ赤に染めて行く。
「で、でもあんなお店に…!」
「あれは寂しい人生を送るダグとキョウシロウへのサービスだ。そもそも二人に頼み事をしようとしてたんだしな。」
騙されないぞと言及しようとするルイの声に被せるように発言して照れ臭そうに頬をかくブレイヴ。
「次行く街の途中に夜景が綺麗なベストスポットな丘があるんだ。奴らにそれとなく二人っきりにして貰うように頼みつつ。サプライズでこれを渡そうとしたんだよ」
「ブレイヴ…」
「ルイ…」
見つめ合う勇者と僧侶。お互いの手を握り顔が徐々に近付いて行く。
「いやー、暑いな暑いぜ。鎧越しに受けた打撲が熱を持ってるみたいだ」
「全くだァ…で、俺達はなんでこんな怪我負わなきゃいけねェんだろォなァ」
「俺も大破された店の信頼を失って取引先を一つ失い、沈んだ気持ちにその暑さを分けて欲しいぜ」
三つの影。勇者に盾にされた被害者の会が集まった。みんな顔や体中に包帯を巻き素敵な笑顔を浮かべている。
「お前ら!お亡くなりになったわけじゃ」
「え…え?皆様その怪我は…?」
バッと勇者と僧侶の距離が離れる。乙女の愛憎状態の記憶はなくわたわたするルイ。
「転がってたから持ってきたぞ」
「ふいはへん…ひへんはひほひい(すみません、地面が気持ち良い)」
ルシアさんは星になって道端に落ちたシュウを引きずって来た。シュウは顎が外れて上手く喋れないよう。被害者の四人はここに集結した。
「だァれがァ、マイシールドだってェエ?」
「この石ころ、なんだと思うブレイヴ?」
「まさか墓とか言わねェよなァ?しかも鎧野郎と一纏めにしやがって」
「ふいはへん…ほはほりひはいほへふは、はらはばふほははふて(すみません…お守りしたいのですが、体が動かなくて)」
腹にぐるぐる巻きにされまくった包帯を巻くエドは地面を思い切り踏んで破壊する。傷だらけでボコボコに凹ませている鎧を着たダグは『ダグとキョウシロウの墓』と書かれた石を片手で握り潰す。キョウシロウは片腕を添え木で固定されながらも刀を抜いて近くの建物を斬り、建物は横へとズレて崩壊。
「愛の逃避行だ、ルイ」
「え?えぇ!?」
ひょいとルイをお姫様だっこする勇者に頬を染めて視線を逸らしながらも心音が跳ね上がるルイ。
「「「「逃がすと思うか(ァ)?往生せいや!」」」」
「だが断る!」
ルイを姫様抱きをしたまま駆け出す勇者に追う四匹の復讐者三人。騒がしくも愉快、わりと美女とイケメンで構成されている最近の勇者ご一行。

「ほうふうほほへほうは?(どういう事でしょうか?)」
「いや、バカばっか、だな」
残された二人。何が何やら分からず疑問符を浮かべるシュウと、はふとため息をつくルシアさん。しかし二人は楽しそうに口元が緩んでいた。遠くから聞こえる三つの怒号と破壊音、茶化すような嘲りの声を上げる笑い声。
彼らの旅はこの後唐突に2年の空白が訪れるもまた誰ともなく自然と集い続いて行く事になる。

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