キョウシロウ 2014-08-14 21:53:29 |
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《末永爆発組/中編》
「何か、言う事はあるでしょうか?」
こつりこつりと靴音を響かせてゆっくり歩いて来るルイ。相変わらずの笑顔で、美しい唇から紡がれる言葉は銃口を突き付ける冷たさを錯覚させ、三人は処刑台で実行を待つ囚人の気分を味合わされていた。
「さて、トイレに…」
「行かせねえよ!待てやぁぁあキョウシロウ!トイレなら刀置いてけー!そして何故さり気なく自分の分を支払いしてく!」
「バカ!お前。刀は侍の魂だから!いや、そもそも俺はたまたま、たまたま!お前らに会っただけだし!」
「いや、ルイ、これには事情があってだな。ブレイヴも浮気とかじゃなくてだよ。取り敢えず話を聞いてくれるか?」
すっと三分割で割り勘にした時の請求額を置き立ち上がるキョウシロウの服の裾を掴む勇者。逃げようとするキョウシロウに止めるブレイヴ。わちゃわちゃと騒ぐ二人と違い流石は年上で頼れる兄貴、片手の掌をルイへと向けて落ち着いて冷静な態度で先ずは話し合いをしようと提案する。
「そもそもこの店選んだのキョウシロウだろ!」
「それを言ったら『女のいる店よろしく』って注文したのはお前だ!」
「俺はこんなえっち衣装の女がいる店とは言ってませーん。取り敢えず潔く死.ぬのが尊いのが侍だろ!死ぬが華と心得るんだし、頼む俺の代わりに逝.ってくれ!仲間(盾)だろ!?」
「何でお前の為に殺られなきゃいけねェ!亡くなるとしても札束に埋もれるか金銀財宝に囲まれてなきゃ死.ぬに死.ねねェよ!つかお前の女だしお前が何とかしろ!」
原因をお互いになすりつけようとして我先に逃げようとしてお互いにそれを邪魔するゲスコンビ。何故かそれまで満席に近かった室内もいつの間にか煙のように人々が消え、現在男三人と女一人だけになっていた。
「分かってくれ…たわけじゃねぇよなぁ。ふぅ…お前ら下らねぇ言い争いしてんじゃないよ。時間稼ぎしてやるから、それまでに冷静になれ」
一定の距離へと近付き立ち止まるルイを見て安心しかけるダグだっだが、雰囲気が一切代わりない事で諦めにも似た溜め息を零す。背中越しに騒がしい二人に注意をしてから年上の威厳を見せ、二人に広い背中を見せるダグのその姿は逞しくも頼りになるの一言であった。
「先に外に行ってろ…なっ!」
ほぼノーモーションで放たれた飛来する鉄球。ダグはドッジボールの球をキャッチするようにして鉄球を受ける。ドゴン!と鈍い音がするが見事に鉄球を胸に抱えるようにして受け止めたかのように見えた。
がしかし、鉄球は勢いを止めずにダグを吹っ飛ばし店の壁に減り込むどころか破壊し瓦礫へと埋まり暫し時間が経っても姿を見せないダグ。
「あの鉄壁の鎧野郎が…」
「一撃…だと…?」
勇者メンバーの中でも随一の守備力を誇るダグ。本来ならば鉄球の一投如きでやられる筈が無い。特殊条件下でのパッシブスキル乙女の愛憎を発動させている僧侶さんは全能力が愛の強さ分累乗させ過剰なパワーアップを果たしているのだ。それまでの言い争いをしていた二人はピタリと動きを止め、瓦礫へと消えたダグを信じられない物を目にしたように瞠目させる。
「まずは邪魔者一匹目…ふふふ」
怪しく笑い片腕を振るって鉄球を引き摺り戻すルイ。
「「…!?」」
隙を付きお互い示し合わせたように左右へと飛び外へ向かうべく走り出すブレイヴとキョウシロウ。
「う、お…!?」
鉄球が飛んだ方向に居たのはブレイヴ。ギリギリスライディングをして窮地を脱するブレイヴは無事に外へと避難に成功する。
「わざと逃したんです、ブレイヴ」
勇者が避難したと同時にキョウシロウに向かって跳ねたルイは鉤爪を振るうも、難なく刀で受け止められる。
「おいおい、俺相手に接近戦とか舐めすぎじゃねェか?」
「貴方が、です」
「床が!…はや…!」
ルイが地面を踏み抜く事で地震に足をぐらつかせ地割れが発生しキョウシロウは後方へ飛び退く。直ぐに空中戦が展開、再び振るわれた鉤爪の一振りを刀で受け流すも続けて放たれた回転裏拳を躱す事はならず、肩を上げ守りに移るが衝撃にキョウシロウは横回転しながら宙を吹っ飛び背中から天井へと激しく衝突、落下途中に吊るされたシャンデリアへと引っかかり沈黙する。
「二匹目…最後は貴方ですよ、ブレイヴ。待ってて下さいね…うふふふ」
恋する乙女のパワーは無限大。勇者の運命はいかに!?鬼神、否…鬼嫁と化したルイを止める事が出来るのか。
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