【其の男一匹の獸(けだもの)也〜最近の勇者一行は以下略 outside story〜】

【其の男一匹の獸(けだもの)也〜最近の勇者一行は以下略 outside story〜】

キョウシロウ  2014-08-14 21:53:29 
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正義の味方、英雄、ヒーロー…様々な呼び方があるが、勇者一行は魔王を討伐する為に旅する集団である。
その中に一人上記の呼び方に似付かわしくない男がいた。彼らとは一線を引くその男は、三白眼の鋭い目付きは見る人を威圧し、凶悪な笑い方は聞く者を不快にさせる、佇まいは美しいもどこか危なげで、近付く者を斬り捨てるような、刀剣類さながらの鋭利な近寄り難い雰囲気、身体からは常に血の匂いを漂わせる危険な香り、腰から得物である日本刀を携えた紺色の和服の一人の男。勇者一行の中の一人、吉岡狂四郎と言う名の男。
これは彼の視点から綴られる勇者一行のお話と、彼が極悪非道の守銭奴に至るまでの、過去の回想のお話である。

個人用の小説になります。稚拙な文章ではありますが暖かく見守って頂くと幸いです。勇者一行の皆様はご意見希望など御座いましたらご遠慮なく申し付けて下さいませ!←

ではこれにて開幕致します。

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  • No.29 by キョウシロウ  2016-10-04 18:22:35 

《末永爆発組/前編》

「おいおい、大丈夫なのかよブレイヴ。激しく嫌な予感がするんだが」
全身をプレートアーマーで覆う身の丈190cmを越える大男が横を向いて二人の人物へと意見を申し立てる。
「心配するなよダグ。そこら辺は徹底してるっつーかお前ら二人と飲みに行ってくるって許可貰って出てるから。でキョウシロウ、異変はないだろう?」
真ん中の席の金髪碧眼の垂れ目で容姿端麗な見た目をした青年が答えダグとは逆の左隣へと目を向けると扉が開き黒髪のポニーテールの青年が丁度席へと着く所。
「ああ、お前らと待ち合わせしたこの場所は入り組んでいて分かりにくい。周辺には尾行してる奴も居なかったぜ」
煌びやかながら薄暗い店内には給仕に際どい服装のバニーガール姿の女性達が狭い通路を行き交っている。それぞれの席には円形になるような配置でソファが置かれ、店内は空席が見られない程賑わいを見せている。その座席の一つに三人の男達が座っていた。
「これだよこれ。旅をして新たな街へ着く時の楽しみは!世界には様々な人がいる…ご当地の女も地域によって変わって来るからな!良い店を教えてくれたねキョウちゃん」
「この街には昔来た事があってな。風俗系を取り仕切る裏ギルドの頭との取り引き先がここだったんだ」
「ほー、意外とこう言う店ばっかり入ってんのかと思ったぞ」
「なわけねェだろ、鎧野郎。金の無駄だ」
運ばれて来た酒をそれぞれ煽りながら和気藹々と話す三人。この時は楽しそうにしていたのである。
「で勇者君、お前の奢りとは珍し過ぎる話なんだが一体どうした?」
「よりによって女がいる飲み屋と来た事だ。金もかかる…お前一人だけなら兎も角、俺ら二人にも奢るっつーのは相当だろう」
「ふっふっふっ!いやね、彼女の一人も居ない君ら二人は女っ気が無くて可哀想だと思ったから、せめてもの配慮さ!」
そう、今日の飲み代は勇者の奢りなのだ。女と金が命と豪語するゲスの一角の勇者が、だ。みんなの兄貴分事ダグと銭ゲバゲス仲間キョウシロウの二人が聞くのも無理も無い話である。二人の疑問に気分良く勇者(笑)のブレイヴは嘘か本当か答える。
「幸せほやほや真っ只中の勇者君は言う事が違うな。彼女…彼女ねぇー」
「ああ、余計なお世話だ。女なんざ金がかかるだけだろう。こう言う場所で働いてる奴はアウトもアウトだ。最低限金がかからない奴、又はヒモで生きてけるような富豪の女が理想だぞ」
名目上は慰めを受けた二人。片や彼女が欲しいのかどうか分からない陽気な兄貴分、片やどこまでも金な命で女性からしたらゲスな都合の良過ぎる理想像を述べる守銭奴。
「ほう、金のかからないと言えばルシア、ヒモになれると言えばルイ。仲間にいるってのもどうなんだ、ってルイはやらんぞ!」
「いや、いらねェよ。」
「ルイはブレイヴにメロメロだからなー。見てるだけで微笑ましくなってくんぜ」
該当する人物を思い浮かべ仲間内にいる事実にしみじみしたと思えば直ぐ腕をバッテンにして威嚇するブレイヴに、肩を竦めて直ぐに断るキョウシロウ、恋バナが好きなのかニヤニヤして僧侶の勇者への思いを口に出すダグ。冒頭で嫌な予感がするとか言って置いて酒も入り楽しいお話にすっかり忘れてるようだ。
「おほん、本題に入ろうか。今日二人を呼んだのは他でも無い頼みたい事があってだな__」
咳払いをして佇まいを直し目的を果たす為に奢るとまで言った大事な要件を二人に告げようとするブレイヴだったが、静かとは言えない室内に扉が開く音がやけに響いた。
「「「……!?」」」
ゾクリ!肌寒さのない今の季節。扉が開き来客が訪れた途端に三人の頭に警鐘が鳴り響く。言いようのない不安に三人はゆっくりとギギギと音が鳴るような動きで扉へと目を向ける。
「ふふふ…」
そこには素敵な笑顔を浮かべる長い金髪の白いローブを着た僧侶の女性。鉄球であるモーニングスターが地面へと付き引きずって来たのか鎖がジャラジャラと音を立てる。彼女の背後にはゴゴゴゴと大きな文字が見え、更にゆらゆらと炎のように揺らめく黒い炎が幻視出来る程に空間が謎に歪んでいた。勇者の愛しのルイちゃんのご登場である。
「あ、えっと…」
「はは、いやー」
「ふぅ…」
それまでの賑やかムードは一転。ブレイヴは表情が固まり笑顔が引き攣り片手を上げて言葉につまり、ダグは頭を掻いて隣の勇者と扉の前のルイを交互に見比べ、キョウシロウは現実逃避か煙管を加えて煙を吐き明後日の方向へと目を向けている。一気に酒が抜けた三人。冒頭の三人の会話、大丈夫かと心配するダグ徹底してると余裕ぶったブレイヴ抜かりはないと確認したキョウシロウ。見事と言うしか他に無いフラグを建設していたのであった。

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