【其の男一匹の獸(けだもの)也〜最近の勇者一行は以下略 outside story〜】

【其の男一匹の獸(けだもの)也〜最近の勇者一行は以下略 outside story〜】

キョウシロウ  2014-08-14 21:53:29 
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正義の味方、英雄、ヒーロー…様々な呼び方があるが、勇者一行は魔王を討伐する為に旅する集団である。
その中に一人上記の呼び方に似付かわしくない男がいた。彼らとは一線を引くその男は、三白眼の鋭い目付きは見る人を威圧し、凶悪な笑い方は聞く者を不快にさせる、佇まいは美しいもどこか危なげで、近付く者を斬り捨てるような、刀剣類さながらの鋭利な近寄り難い雰囲気、身体からは常に血の匂いを漂わせる危険な香り、腰から得物である日本刀を携えた紺色の和服の一人の男。勇者一行の中の一人、吉岡狂四郎と言う名の男。
これは彼の視点から綴られる勇者一行のお話と、彼が極悪非道の守銭奴に至るまでの、過去の回想のお話である。

個人用の小説になります。稚拙な文章ではありますが暖かく見守って頂くと幸いです。勇者一行の皆様はご意見希望など御座いましたらご遠慮なく申し付けて下さいませ!←

ではこれにて開幕致します。

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  • No.25 by キョウシロウ  2014-08-23 04:49:24 

《外道》

遊郭がある色街から一番近い街、徒歩で三時間程の街。街並みは煉瓦作りで、賑わっているようで行き交う人々は忙しそうに足並みは早い。
「うわぁー、沢山人がいるね、キョウ。」
「ああ、あの町とは人の服も雰囲気も違うよね。」
二人の少年少女は人々の格好や街並みを眺めて感動したようにボーッと首を左右に振り続ける。
いつまでも街並みを眺めている場合にも行かずに、ハッとして自らの頬を両手で挟むように叩く。
「あ、サユリ、取り敢えず働く場所を探さないとな…。」
「そうだね。住む場所がないと始まらないもん。」
彼らはそれから、働かせて貰う場所を探すべく街中を歩き回る。
「働きたい?君達まだ子供だろ?親御さんとこに帰りなさい。」
最初の店は家出だと思われて断られた。
「こっちはガキを雇ってる余裕なんざねえんだよ。帰れ帰れ。」
次の店は厄介者のように追い払われた。
「ああ、孤児か君達。いい事教えてあげるよ、君達みたいな孤児を雇ってくれる場所なんて何処にもないよ。みんな自分が生きる事に必死なんだ。」
丁寧な言葉ながらも追い出される。それからも目につく店に入っては帰らされた。殆どの店を回ったのだろうか、空は既に暗くなっている。
「…………」
「…………」
二人とも既に言葉を失っている。歩き疲れてるのもあるが、朝から何も口にしていない、喉もからからだし、空腹でもある。働いていた頃は食べ残しで早く食べなければいけなかったものの、ちゃんとした物を昼過ぎに食べる事が出来た。
「お腹…空いたね。」
「ああ…」
サユリが小さく呟く。それに頷き答えるキョウは頭の中で考えを巡らしている。働く場所は望めない、住む場所もない、食べ物はない…。一体どうすれば…。
「…ここは?」
「キョウ、何だか怖いよ。」
やがて街外れへと到着する。活気のある背後の街並みとは違い薄暗く、廃墟と化した今にも崩れ落ちそうな建物が建ち並ぶ。人の住む気配もない。サユリがキョウの腕を掴む。それに答えるようにして、ごくりと唾を飲み込み口にする。
「今夜はここで野宿しよう。」
本気なの?というような目で見てくるサユリに頷いて見せる。
後になって知る話だが、街外れにあるこの荒んだ場所は以前はちゃんとした街だったも、戦争によって破壊され蹂躙されたゴーストタウン、現在はゴミの廃棄場で立ち入る住民もいない、特区と呼ばれる場所である。
廃墟街へと足を踏み入れる二人、前方には人が倒れている。汚れた服に体からは異臭が漂っている。
「大丈夫ですか?」
「大変だ。医者…」
慌てて近寄って行く二人、男は衰弱していて体が骨と皮になっていて痩せ痩けている。キョウは医者という言葉を口に出しかけて言葉を紡ぐ。医者は金がなければ治療しないのだ。サユリは男の肩を揺する。最初は弱っていた男も急ににやりと笑ってサユリに抱き着くようにして、覆い被さる。
「げほっ…ガキ共か…女ぁ!すーはー、女ぁ女ぁ、いい匂いだ、たまんねえよ。久々の女だ、やらせろぉお!」
激しい息で舌を出して興奮する目の焦点が合っていない男。サユリは驚いて悲鳴を上げる。
「いやっ…きゃー!」
「……!何してんだぁお前ー!」
身を捩って嫌がるサユリに、男は押し倒して服に手を掛け引き千切る。キョウは咄嗟に落ちていた木の棒を拾って男の頭を後ろから思い切り殴りつける。すると男は呻き声を発して頭部を抱える。
「うごぉ…。」
「キョ、キョウー!」
その隙に必死に男から離れキョウの後ろに隠れるサユリ、キョウは両手に棒を持ち震える体で床に這いつくばる男と対峙する。
「くっ…痛ぇ……ちっ…そういや二人居たなぁ、失敗失敗…。安心しろよガキ。俺は見ての通り、自分で歩く力すらねえ。」
持っている棒をからんと落とす。なんで、と言ったような表情を送られ男はおかしそうに歪んだ笑みを浮かべて言葉を綴る。
「ここに来たばかりだろうから、おじさんが優しいアドバイスをしてやるよ。世の中金だ…金がなけりゃなーんも出来ない。働けなけりゃ食ってもいけない。住む場所がなければ人間の最低限の生活も出来ない。こっちの世界は金のねえ人間の住処だ…」
「……違う街に」
「ここから近くにあるのは、色街だな。あの街も金がなけりゃ何も出来ない。他の街に行くには森を通り抜けるか、砂漠を越えなきゃならねえ…でも無駄だぜ。どこに行こうにもヤバイ魔物がうじゃうじゃいる危険地帯を抜けなきゃならねえからな。」
男の言う通り、ここから先の街へと旅立つにはそれなりの腕を持った護衛を共にしなければ自殺行為だ。魔物達はRPGで例えると物語の中盤の街周辺のフィールドに出て来るモンスターばかり、子供だけでこの街から出て行けば、瞬く間に魔物の餌になってしまうだろう。
「……………。」
キョウはごくりと唾を飲み込む。
「でもここから先は地獄だぜ。騙し合い、奪い合い、殺し合う。弱者は生きていけない、弱肉強食の世界だ。お前ら2人はいつまで生きられるかなあ?ククッ…ハハハハ…」
男の笑い声が木霊する。キョウはサユリの手を引き笑い声を続ける男の声が聞こえなくなるまで、廃墟街の奥へと歩いて行く。

それから三日後、キョウは一つの廃墟を根城にして、外へと出ていた。
「取った!」
彼の手に握られているのは生きたネズミだ。両手でネズミを捕まえて喜びの声を上げる。これで一匹目、ネズミ一匹を捕まえるのも一苦労だ。食べる物が無ければ捕まえるしかない、彼はネズミを食べる事にしたのだ。二日間の間、雑草を食べて生活してきたが腹は膨れずに腹を壊した、雑草も食べられる物と食べられない物がある。サユリは廃墟で留守番をしている。
「お…ガキ、いいもん持ってんじゃねえか、へっへっへ…」
手に鉄のパイプを持つ男が歩いて来る。
「寄越しな。」
「嫌だ…」
片手を差し出して来る男、キョウはそれを無視しネズミを懐に抱き締めるように抱える、がその瞬間頬に重い衝撃を受ける。
「ぐっ…」
今までに感じる事がなかった痛み。善十郎には殴られてはいたもののあくまでも素手、男は手に持つ鉄パイプで彼の頬を思い切り殴りつけたのだ。キョウの体は地面へと何回転もする、そして血と共に折れた歯をぺっと吐き出す。
「おらおらおらぁ!寄越せやぁああ!グハハハッ!」
倒れたキョウの腹を背中を頭を容赦なく蹴り続ける男。キョウは痛みでネズミを手放してしまう。蹴りで圧迫されて死んだネズミを男は取りそのまま口へと運ぶ。
「うぅ…」
「あむあむ…うめえ…最初から素直に寄越してればいいんだよ、ガキ!余計な体力使わせやがって。」
ネズミを食いながら倒れるキョウの腹を思い切り蹴って満足したのか男はヘラヘラ笑いながら去って行く。
「ぐぅ…げほっ…」
血反吐を吐きながらここに来て最初に会った男の言葉を思い返す。
『ここから先は地獄だぜ。騙し合い、奪い合い、殺し合う。弱者は生きていけない、弱肉強食の世界だ。お前ら2人はいつまで生きられるかなあ?』
キョウは学んだ。奪うと言う事を、奪われたら何も残らない。なら奪うしかないと…地面に染みる自分の血反吐を薄くなる意識の中でぼんやりと眺めながら拳を握り締める。


それからは盗みを繰り返す日々、体のサイズに合った鉄パイプを片手に物陰から襲い掛かり不意打ちで倒す、石で違う場所に目を向かせて隙をついて襲うなどの小細工も身に付けた、この戦法なら大人が相手だろうと簡単に食料を奪う事に成功する。時には老人や同い年位の子供を襲って食料を持つ相手から強奪をして行った。サユリにはこの事は言っていない、後ろめたかったのだろう。彼女にはこんな自分を見られたくなかったのだ。いつも食料は拾ったものや捕まえたものとして一緒に食べていた。
このゴミダメに来てから1年が経過しただろうか、この界隈では悪童と呼ばれる者へと名が広がっていた。
そんなある日の事、何時ものように狩りに出掛けていた。
「…お、今度のはいい獲物だ。」
物陰へと隠れて道を見ると長いポニーテールを靡かせ歩く和服の男、肩には大きな包みを背負う、お誂え向きに足は剥き出しになった銀色の義足のようで走る事も出来なそうである。この距離だと遠いか?でも義足だし逃げられる事はないだろう、幸い足には自信があったし、狩りも数をこなして失敗も最初の頃に比べて格段に減って行った。
だが、何かが彼の頭で警鐘を鳴らしている。危険だ、退け、行っては行けない。
「何を今更…」
胸元の服を握って気持ちを落ち着かせる。すると物陰から男へと襲い掛かる三人組が走り出す。
「ちくしょう…!」
グズグズしていた内に先を越されてしまった。三人組が和服の男を襲い打ち倒し、油断した隙を狙って食料を強奪する作戦へと変更しよう。男達から少し遅れて走り出す。
「え…?」
だが、彼の予想とは裏腹に思いもよらない結果になる。
和服の男を襲うべく走り出して行った三人組は瞬く間に首や胴体などの体が切断されて、細切れの肉塊へと変貌したのである。走り出していたキョウの足取りは段々と遅くなり、いずれその場に佇むようにして立ち止まる。一体何が起こった…?風のような銀色の煌めく物が見えが目をぱちくりして考える。腰へと何かを戻すのが見える、あれは剣か。
「あん?なんだ、まだ居たのか…俺に気配を感じさせないとは、ここの住人達は大したもんだな。」
男が振り返り目と目が合う、同じ三白眼の鋭い目付き。二人とも一斉に驚いた表情を浮かべる。
「「……!」」
「ガキ、お前…名前は?」
ゆっくりと義足を引きずりながらキョウとの距離を近付ける。足取りは重く、その体は鈍い事が伺える。
「キョウ…吉岡 恭。…吉岡香澄の息子だ。」
足が竦んで動かない。体も震えが止まらない、目の前の男からは死の匂いがして堪らないのだ。それは圧倒的強者を目の前にした状態、蛇に睨まれた蛙とはこういう事を言うのであろうか。それでも震える唇に喉から何とか声を振り絞りしっかりと答える。
それを聞いた男は、彼の目の前に来た時に立ち止まり、額に片手を上げて大きく笑う。
「ククッ…クククッ…クハハハハッ!なんて、偶然だよ。こんなゴミダメみてえな腐った街で、まさかの拾いもんと来た!するってーとなんだ、香澄はくたばっちまったかおい?」
瞬間、男の物言いに怒りが湧き上がる。先程の恐怖心に打ち勝つ怒りで手に持つ鉄パイプを握り締めて襲い掛かり男の顔面へと向けて振りかぶる。
「そう、怒んなよクソガキ。図星か、あの野郎…死んでからも余計なお荷物俺に預けようとしやがって。」
男が手に持つ刀、鞘に入ったままのそれがキョウの鳩尾に突き刺さる。手に持つ鉄パイプを地面へとからんと落とし、一瞬呼吸が止まりながらも刀を鞘の上から握る。
「かはっ…」
「お…意外にも打たれ強いな。俺の刀に触るんじゃねえよ、っと!」
刀を掴まれると意外そうな表情でキョウを見下ろしながらも容赦なく彼の顔面に蹴りを入れる。子供の体でもあるので容易くキョウは宙へと吹っ飛び地面へと背中を打ち付ける。

それが、父である鷺沢狂四郎との初対面だった。

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