ハナミズキ 2014-08-09 16:30:42 |
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◆ 時空の彼方 番外編 ◆
夕月が千年前の過去から戻って三年後。
高校も卒業をし、今は国帝館大学の文学部神道学科で学んでいる。
今でこそ女性の宮司も認められてはいるが、戦前まではその存在を認められてはいなかった。
したがって今もなお、宮司になっている人は男性が多い。
なぜなら、女性の宮司は、実家が神社でもない限りはその職に付く事が出来ないからだ。
夕月の場合は、実家が神社である事と、幼い時からその才があり、生まれながらにして仕鬼を持つという恵まれた環境におかれていた。
しかし、この国帝館大学の神道学科は、全寮制であったため、夕月も寮に入る事になった。
神道科全体でも40名ほどなのだが、その中に居る女子は、夕月を含め三人しかいない。
残りの37名は男子だ。
したがって、男子寮と女子寮に分かれる事はなく、同じ階に男子と女子の部屋が分かれているだけになる。
部屋も基本二人部屋なので、一人だけ個室として使う事になるが、夕月の場合、仕鬼である白夜が付いてきてしまっているので、二人で一部屋を使っていた。
夕月が入学をしてきた時、「明階」の位を持つ教授が驚く。
夕月と白夜の周りには、金色の光が見えていたからだ。
入学をして間もない、何の修行もしていない学生たちには見る事も感じる事も出来なかったが、九尾の白狐姿でちょこんと夕月の足元に座っている白夜の姿も見えていたのだった。
この学校は、動物持ち込み禁止ではあったが、白夜だけは例外の様だ。
それに、他の学生とは違い、知識も豊富で、基礎的な学問はすべてマスターしていた。
教授にすれば教える事など何もないに等しい。
しかし、この学校を卒業しない限り、神職に付く事が不可能なので、夕月は進学をする事に決めたのだった。
一時ではあるが、あの稀代の陰陽師、安倍 晴明に手ほどきをしてもらった事のある夕月の方が、ある意味、教授より物事を良く知っていた。
祝詞にしてもそうだ。
昔の、あの長ったらしい祝詞を、一字一句間違えずに言う事が出来る。
仙術や星詠みも、あの晴明仕込みだ。
教授は、何かと夕月を研究室に呼んでは、逆に物を訪ねる事も珍しくはなかった。
しかし、何も知らない同級生や上級生たちにしてみれば面白いわけがない。
教授に特別扱いをされているようにしか見えないのだから。
それでも気さくに話しかけ、裏表のない夕月に、少しずつ心を開いていき今に至ると言う訳だ。
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