ハナミズキ 2014-08-09 16:30:42 |
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――― Dr,リン ――― より
◆ 秘境 ◆
このミョンレンは、各温泉宿に造られた温泉の他にも、秘境と呼ばれる温泉があるらしい。そこにも入ってみたいと思っていた鈴だったが、秘境と呼ばれるからにはとんでもなく山奥にあるに違いないと思い、諦める事にした。
案内人もなく、山に入ったならば、100%の確率で迷子になる。
それはごめんだ。
しかたがないので、近くにある温泉で我慢をする事にした。
次の日、鈴は温泉街を散歩しながら、近くにある秘境についての聞き込みを開始した。
数人の人が言うには、ここから30分ほどの所にある、川の脇から湧き出ている温泉源があると言う。
温度調節は川の水でするそうだ。
さっそく行ってみる事にしたが、鈴の怪しい行動に気が付いた和也が付いてくると言う。
「おまえ、行く気だろ」
「何の事かしら?」
とぼけて見せる鈴だったが、和也にはお見通しの様だ。
「秘境に行くなら俺も興味がある。一緒に行ってやるよ」
「・・・・・バレてたか・・。」
鈴は笑って誤魔化した。
教えてもらった道を30分かけて歩き、ようやく秘境に到着をした。
温泉街から30分足らずなのだから、人が来ても良いと思うのだが、誰にも会わず到着をする。
そして誰も温泉には入ってはいなかった。
温泉と言っても、人里離れた場所に在り、整備もされていないし着替えるような小屋もない。
裸になって温泉に浸かれば丸見えだ。
「「・・・・・・・・・・・・。」」
せっかく来たのに入れない。
いや、入れるのだが、お互い時間差で交互に入れば、温泉に浸かっていない者は寒くて凍えてしまう。
春とは言っても、まだ少し雪が残っており、寒い!
ここまで来るだけでも寒さを感じて、早く温泉に浸かり、冷えた身体を温めたいと思っていた2人だった。
すると突然和也が着物を脱ぎ出し、温泉の中に入って行く。
「はぁ~・・・生き返るな~」
鈴はその姿を見ながら言う。
「自分だけずるい!」
「ならお前も入れば?」
「えっ!?」
「入りたいんだろ?どうせ誰も見てないし入ればいいだろ」
お互い医者としての立場上、異性の裸は飽きるほど見ていた。
それに、鈴は和也の全裸を一度見ている。
いや、今回で2度見た事になる。
自分が平気で和也の裸を見ていられると言う事は、和也も別に意識はしていないだろうと思い、思い切って温泉に入る事にする。
「気持ちいい~♪」
「だろう」
「ここの温泉源は硫黄かな?水が濁ってて底が見えないし」
「臭いからしてたぶんそうだろうな」
「深さも結構あるわね」
鈴が立っていても胸元までの深さがあった。
「端の方に座れる場所があるぞ」
「じゃあ、そこに座ろっかな」
底の見えない温泉を歩いて、和也が言うその場所まで行こうとした時、急に足元が深くなり沈んでしまった。
和也の身長では首辺りまでのギリギリだったので、頭まで沈む事はなかったが、鈴の身長は和也の胸元あたりまでしかなかったために、一気に沈んでしまったのだった。
慌てた和也は鈴の側に行き、湯船の底から鈴を拾い上げる。
少しお湯を飲んでしまった鈴はむせ返り、苦しそうだ。
和也は片手で鈴を支え、もう片方の手で鈴の背中を摩っている。
「おまえ平気か?」
「ゴホッゴホゴホ・・・ちょっとぉ・・深いなら深いって言ってよね・・」
「俺は平気だったぞ?お前が小さすぎるんだろ」
「和也がでかすぎるんでしょう・・・」
そんな不毛な会話をしている時に、ふと、和也は気づいた。
鈴の体を支えている方の手が、鈴の胸に当たっている事に。
一度それを意識してしまっては、手を動かす事が出来なくなってしまったのである。
そして、いくら水の中で負荷がかからないからと言っても、温泉の微妙なぬめりがそれを許してはくれなかった。
徐々に和也の手が上へあがり、鈴の胸を捕えてしまう。
鈴の方も気が付いてはいたが、自分が騒げば和也は手を離してしまい、また温泉の中に潜ってしまうので、気が付かない振りをしていたのだった。
たわいもない話しで、お互い気を紛らわせようとしたが、和也も一応は男だ。
何とも思っていない振りをしてはいたが、身体の一部がしっかりと反応をし始めてきた。
―――― ヤバイ!! ――――
その時、そっちの方に気を取られ、手の力が一瞬抜けた。
鈴の体がまた潜りかけたが、和也は素早く両手で抱え抱き寄せた。
抱き寄せられた時、鈴は太ももに固い物が当たる気配を感じ、それが何なのかは直ぐに分かった。
が、あえてその事には追求しない鈴だった。
和也は平静を装いながら、そのままの状態で鈴を淵まで運び、腰掛岩に座らせる。
表面では何も気にしていない様に振る舞う2人だったが、内心はかなりドキドキしていた。
和也は鈴の柔らかい体に触れ、その感触が離れた今でも手に残っている。
鈴の方も、見た目より筋肉質な和也の感触と、胸の残る手の感触が脳裏から離れないのだった。
健康診断の時に、男の先生から体に触れられたり、乳がんの検査をされたりしたことはあったが、それはあくまでも仕事上の事で、事務的な触り方であった。
それと比べると、今の和也の触り方は、繊細で優しく包み込むように触れているだけであったのだ。
触り方一つでこんなにも違いがあるのかと思うほど、脳裏に焼き付いて離れないのだ。
「おぃ。あんまり長湯するとまたのぼせるぞ」
「・・・・・うん。」
2人は秘境を別の意味で(?)堪能し、宿の方へと帰って行った。
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