ハナミズキ 2014-08-09 16:30:42 |
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何日か過ぎたころ、夕月と白夜は神社の境内に立ち夜空を見上げていた。
「星がきれいね」
「そうだな」
「ここにはもう、晴明様は居ないのね」
「そうだな」
「白夜ってば、そうだな、しかいわないんだから・・・もぅ」
「・・・・・・・・・。」
「なぁ、夕月。少し散歩に行かないか」
「どこに?」
「昔みたいに見回りにでも行くか」
そういうと白夜は白狐化をし、その背中に夕月を載せて夜空を駆け抜けた。
「すご~い!きれ~!!」
京都の町の辺りが、まるで宝石箱をひっくり返したかのようにきらびやかに光り輝いている。
昔も良く白夜の背中に乗り、夜回りだと言ってはこき使っていたものだ。
夜空を駆け巡っている時に白夜が何を思ったのか、稲荷神社に舞い降りた。
そこの神様に二人は丁寧にあいさつをすると、神は今晩一晩泊まって行けと言う。
泊まる場所は、昔、白夜が寝所に浸かっていた社だ。
その社は今もそこに綺麗な姿で立っていた。
中に入ると、外から見た感じとは違い、とても広い。
奥の部屋には何故か寝所の用意が整っている。
二人はその好意に甘え、一晩そこに泊まる事にした。
朝日が昇る頃に晴明神社の方に戻れば問題はないだろう。
静まり返る部屋。
この社は外界とつながっていないのか、さっきまで聞こえてきていた虫の声や車の音などが一切聞こえない。
静かだ・・・・。
「・・・白夜・・・寝た?」
「いや・・。起きてる」
「どうした?」
「なんでもない・・・。呼んでみただけ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・怖いならこっちに来るか?」
「・・・・・・・うん。」
夕月は初めて人型を取っている白夜と同じ布団に寝る事になった。
緊張のあまり胸の鼓動が早鐘の様になりだす。
それは白夜も同じだった。
少し体を動かすだけで、その体温が伝わってき、恥ずかしいような嬉しいような、何とも言えない感情でいっぱいだ。
ゆらゆらと、夢うつつの中、何処からともなく不快な音が聞こえて来た。
―― ぐぅぅぅ・・・きゅるるる ――
「・・・・・・・なに?いまの音・・・」
「すまん・・・俺の腹だ」
「・・・・・お腹空いたの?」
「・・・・・すまん・・・」
夕月は軽く笑いながら口づけをした。
食事となる「気」を移し終わると離れようとしたが、白夜が突然に夕月の体をひるがえし、体勢を逆転させた。
白夜に覆い被さられた夕月は、この時一つの覚悟を決める。
「・・・・白夜。愛してる・・・」
その言葉を聞いた白夜は、はにかむように笑い、今度は白夜の方から口づけをともした。ほ
その口づけは、いつもの食事を摂取するような軽いものではなく、甘く優しい、それでいて激しい口づけだ。
白夜の舌が夕月の口内にそっと入り込み、夕月の舌と絡み合う。
しばらくすると、口元が離れ、頬やおでこにキスを落としながら、唇は夕月の首元へ向かい、来ていた寝巻をゆっくりとずらしながら胸元へ再びキスを落とした。
胸元には赤く色どる星形の痣。
白夜の指がその痣をなぞる。
「・・・・・これが俺たち二人の始まりだったんだな」
「私は白夜のおかげで、今を生きてるのね・・・」
「夕月。・・・・・・・愛してる。今までも、これからも・・俺は一生お前の物だ」
そういうと白夜は夕月と結ばれたのだった。
甘く、優しく夕月を愛撫する。
初めての夕月を怖がらせないように、痛くしないように、優しく、優しく触れる。
「ぁん・・・・」
夕月の口元から甘い声が漏れる。
その声に反応したのか、白夜も限界に達してきているようだ。
「後悔はしないか?」
白夜が優しく問う。
「・・・うん・・・きて」
「優しくできなかったら、ごめん」
そういうと、十分準備の整った状態の夕月と一つになるのだった。
「っあ・・・・つぅ・・・」
激痛が走ったものの、白夜と一つに慣れた喜びの方が嬉しく、夕月はポロポロと泣き出した。
「ごめん・・・痛かったよな・・・ごめんな・・・」
「ううん。いいの。私ね、いまとっても嬉しくって幸せな気分なの」
白夜は夕月の体を抱きしめ、そのまま眠りについた。
次の日、夜明けとともに晴明神社に帰った。
二人が夜中に抜け出した事などは誰も知らないようなので、少し安心をした。
その後も順調に研修をこなし、最終日の前日に、例の結界を張り直す事にした。
その話をどこから聞いたのか、神社中の宮司が見学にやって来る。
大勢の見学者の前で、夕月と白夜は、千年は持つという結界を見事に張り直したのだった。
そして夕月は、例外中の例外ともいえる、神職の階位で、一番くらいが高いと言われる「浄階」を大学在学中に与えられる事となった。
今後この二人の間に、後継ぎとなる優秀な陰陽師が生まれることは、間違いなさそうな予感がした・・・・・・。
― 完 ―
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