ハナミズキ 2014-07-29 20:56:35 |
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サナは手紙を読みながら涙を流していた。
声を噛み殺しながら泣いている。
マメもまた、その姿を見ながら泣いていた。
そしてマメが言っていた『ある人』と言うのが、サイの事だったのだと分かったのだ。
目標も、希望も持てなかったサナだったが、将来サイのようは人を助ける手助けをしたいと思うようになった。
もし自分に、医学的知識が少しでもあったのなら、サイの様子にもいち早く気がついた事だろう。
そうすれば、もしかしたら、サイはいまもまだ、いや、これから先も、ずっとサナの側にいたかもしれない。
もう後悔はしたくない。
サイが好きだといってくれた自分を取り戻したい。
サナの時間はいま、動き出した。
それから数年後。
あの日の思いからサナは看護士になっていた。
どうしようもない暗闇の淵で、大切な人を亡くし、出口を見失い、途方にくれていたサナに、手を差し伸べてくれたのが、同じ大切な人を失ったマメだった。
二人は励ましあいながら、目標に向かって一歩ずつ歩んできた。
止まっていた時間は再び動き出し、いまはサイのように病気で苦しんでる人が1人でも減るようにと頑張っている。
医学は日々進歩をする。
二人はそれぞれに、誰かのために動き続けているのだ。
――― 完 ―――
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