青葉 2013-10-19 22:21:19 |
通報 |
驚きながらも声の主を探す。
そして、窓際にシルクハットを被っり燕尾服を身につけてたたずむ老紳士を見つけた。顔はよく見えない。
「あ……あ……」
うまく言葉が出ない青葉。
言葉が出ない上に緩慢な動きの青葉を見て老紳士は言った。
「なるほど。睡眠と覚醒とのはざまにいる状態で私を追ってきたのですね。それなら或いは、この部屋に人間が来るとも可能なのかもしれません。しかし、危険なことをしたものです。」
青葉は何とか声を出そうとするが、どうにも出すことができないでいると、
「およしなさい。声を出してしまえば、あなたは覚醒してしまいます。そうなると元の世界に戻れるかどうか私には判りませんよ。」
そう老紳士は続けた。
「あ……」
それでも青葉は声を出そうとすることを止められなかった。
「お止めなさい、声を出そうとするのは……。いいでしょう。聞きたい事があるならば、お答えしましょう。あなたがここに閉じ込められる事態になっては、私も後味が悪い思いをすることになりますから。あなたは考えるだけでいいのです。」
老紳士は窓際から動かずにいる。
『ここは何処ですか?』
青葉は心の中でそう訊いた。
「それは私に聞くまでもないでしょう。あなたの家のリビングですよ。」
身動きせずに老紳士は答えた。
『確かにそうです。でも、違います。今の状態ではありません。ここは過去ですか?』
「過去ですか……。そうとも言えるし、違うとも言えます。ここは……そうですね、記憶の世界と言うのが一番に適当でしょうか……。」
老紳士は考えながら、そう言った。
記憶の世界?誰の?
トピック検索 |