青葉 2013-10-19 22:21:19 |
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そんなことも忘れてるのか。忘れるくらいならば、何故あの時あんな僕を苦しめたのかと思う。僕が転校せざるえないほどに執拗に僕を攻撃した。いや、攻撃したというより責めたというのが適当だろう。
そして、初穂は思いがけないことを言った。
「きっと嫉妬してたんだよね。掛井君が早野君と仲良さそうにしていたから。あたしね、早野君のことが好きだったのよ。だから掛井君が羨ましかったのね。早野君と掛井君は同性なのにね。」
この人は何を言っているのだろうか。
早野君のことを好きだったのならば僕を責めたのは理解できる。でもそれは嫉妬心ではない。早野君を追い込んだ僕への恨み、と言うべきではないだろうか。それとも初穂は気を遣ったのだろうか。僕の心の傷を慮って忘れたということにしたのかもしれない。だとしたら、あの頃は早野君の痛みしか解らなかった初穂が、僕の痛みにも気づけるほど時が流れたのだろう。
そんな考えが頭をかすめた瞬間、僕は自分の身勝手さを恥じた。
僕が心の痛みを誰かに共感してもらう資格はない。
僕は早野君の人生を終わらせてしまったのだ。酷いことをしたのだ。僕の人生は反省と後悔で終えていかなければならない。考えてみれば、僕が初穂を嫌うのは間違っている。初穂は、もう何も言えない早野君の気持ちを代弁しただけだ。僕を責めたのは正しいことだ。
「今日は掛井君に奢るから、しばらく付き合ってよ。あの頃の罪滅ぼしをさせて。」
初穂がそう言った。
僕は帰るのをやめた。
「奢ってはくれないくていいよ。」
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