青葉 2013-10-19 22:21:19 |
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「なあ、お前はいつも辛気くさいな。」
先輩はそう言って煙草に火をつけた。
居酒屋というところは喧騒に満ちている。四月に大学生になってから何度か来たが僕とって好きな場所ではなかった。だいたい、まだ十代の僕はアルコールを飲むことができない。しかし、飲まざるえない状況になる。アルコールが好きではない僕には迷惑な事態に陥る。居酒屋とはそんなところだ。来たくはないが、大学の先輩に誘われては断るのことが難しかった。
「すみません。」
抑揚なく答えた僕を見て先輩はムッとした表情をする。
「そんな所が辛気くさいんだよ。何か反論でもしてみろよ。いつも言われるがままでいいのか。」
「すみません。」
先輩は軽く舌打ちをした。
「せっかくの大学生生活だろう。卒業すれば就職してあくせくしながら働く毎日だぜ。今を楽しめよ。」
そう先輩は顔をしかめながら伸びをした。
「だいたいな……」
先輩は説教を始めた。二人だけなので誰も助けてくれる人はいない。まあ、僕は聴く意志などなく先輩の説教は耳に入ってこなかった。
この先輩は畠田という。
大学入学した初日に声を掛けてきて、半ば無理矢理にオカルト研究会という怪しいサークルに僕を連れ込んだ。
オカルト研究会に入るよう口説かれている時に、
「何かサークルに入ってないと大学じゃあ居場所が少ないぜ。」
そんなセリフを言われた覚えがある。が、半年経った今オカルト研究会は僕の居場所になってはいなかった。
このところ僕は辞めるタイミングを考えていたが、なかなか言い出せずにいた。
その時、机の上に置かれている畠田先輩の携帯が振動する。
何かを喋っていた声が止まり、畠田先輩は電話を手に取った。
「もしもし……ああ、お前か。今、掛井と飲んでるんだ。来るか?……そうか。わかった。すぐ行く。」
畠田先輩は電話を切ると忙しそうに煙草の火を消し僕に言った。
「悪いな、掛井。急用ができた。ここまでの支払いはしておくから後は適当にやってくれ。」
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