t. 2013-08-23 20:06:27 |
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___ お嬢様。
(ふと振り返って微笑む。心からの笑みを浮かべた。おいで、そう続けて取り敢えず彼女を待ってみる。来ないにしても来るにしても今は只抱きしめたかった。雨で服が肌にくっつく所為すら今は何とも思わない。否、思えなかった。僕は君が好きだよ。何よりも愛してるんだ。彼女は愛情を知らなかった。それはまるで僕みたいに。__同情でもなんでもない君に僕は恋を教えてあげたい。好きという感情はこんなもので、キスの仕方はこうやってする。__些細なことしか僕には出来ないけれど、君が幸せになれるなら僕は努力をする___否、努力じゃなくて君を愛する、の方が近いかもしれない。出ていく事に関してはもう諦める事も、行く事も僕にとっては分からなかった。今出て行ってお嬢様が泣くなら、僕はいたいけど。彼女に専属する執事はもう決まってる筈。なら己は只の役立たずな居候。些か小さな咳き込みを一つして、もう一度、廻り切らない思考を動かす。)
____ 此処にいても、只の僕は人間だ。
(執事にもなれない、無駄に税を食い荒らす人間。腐ってもそんなもにはなりたくなかった。只のなりそこないだ、そんなの。ましてや、君の婚約者にもなれない人間。君は身分が高い、それに比べてしまえば僕は普通の人間。豊かな生活を暮らしてきた王族の類でもなんでもない。だから、今だけの夢を見たかった。僕は君の恋人になれる__っていう一時的な夢を見たかった。僕は、僕は君が好きだから。それは紛れもない恋心。きっとこれからお高い貴族の奴らと面談をするだけでも僕は嫉妬するんだろう。__永遠に報われない嫉妬を。)
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