榊 2013-07-04 19:42:18 |
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(…さて、まずはコイツをベッドに運ばねば。)
もしかしたら迷子かも知れないし、と自分に言い聞かせ、何か合っても自分は無関係だと言い切る事に決めた。
いや、何が何でもそれを押し通す。事実だし。
「………ん…?」
ふと、まじまじと相手の横たわる顔を見ていると、
(…どっかで見た顔…な気がする…)
何故だか何となく、見れば見る程そう思う。
だがこの男自体は全く知らない。
会った事も無いし、多分街のどこかですれ違ったかどうかだろう。
と深くは考えずベッドまで運ぶ。
「…重い。」
ぐぬぬ、と相手の両腕を引いてドアから引きずり出す。
非常に難しい上に重い。一瞬放置も考えたが、
「……このまま野垂れ死んだら俺が困るし…」
仕方ないよな、と諦めて頑張る事にした。が、先程も言ったように、意外と人を運ぶのは容易では無い為に
「…………。」
(…中々どうして俺も不器用なもので。)
と一応玄関に全身が入ってドアが閉められるといった状態で、ドアにもたれかからせるように座らせる事に成功した。
が、ベッドまではまだ遠い。
『オアシスは何時だって遠いモノである。』
フッと頭をよぎる父さんがキャバクラに行って母さんに怒られてる最中に言った言い訳の言葉。
火に油を注ぐ結果になり父さんは一週間ほど口を聞いてもらえなかった。「………いや、此処どっちかってーと地獄だぜ。」
ボロいし、壁薄いし、そね他あり、と渦巻く考え事。
「…頭が現実逃避し始めてる。」
バシンと頭を叩き、しっかりしろ、俺。と自分に言い聞かせる。
「………。」
そんな俺の心境やつゆ知らず、眠り続けるコイツを見て何となく腹が立ってきた。
「おい、起きろよ。」
さっきとは違い荒々しい口調と動作で相手の肩を揺さぶる。
「…………う。」
ガクガク揺さぶっていると相手が少し反応を見せる。
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