カナリア 2013-06-26 20:48:57 |
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「・・・・誰・・?」
「えっ、あ、スミマセン。勝手に入っちゃって・・・。この部屋にプリントが・・・あの、
取っても良いですか?」
「・・・えぇ。どうぞ。」
「ありがとうございます・・・。」
時が・・・止まったようだった。
窓から差し込む光に照らされた彼女の長い髪は、綺麗な黒。
瞳も黒・・・いや、黒というよりは・・・
漆黒の闇
この時の僕にはそう見えた。
「どうしたの・・?」
俺が、プリントを取ったのにもかかわらずボーと突っ立ていたので、
彼女は不思議そうに聞いてきた。
「っ・・スミマセン。今出て行きま・・・」
「別に良いわよ、私は。あなたに時間があるなら、ね?」
「あ、ありがとうございます・・・」
不思議だな・・・
緊張して、息苦しくて、でも・・・
この空間に、この人といたいと思える。
何なんだこの気持ちは?
「どうぞ、座って?」
立ったままの俺に、彼女はイスに座るよう勧めてきた。
俺は、おとなしくそのイスに腰をかける。
「あなたが近藤信二君?」
「え?どうして名前・・・」
「あなた、結構この病院で有名よ。”毎日母の見舞いに来る優等生”ってね?」
「・・・そうですか。」
「信二君は何年生?その制服、海明高校?」
彼女は俺の制服を見て言った。
「はい、そうです。今2年生です。」
「そう・・・学校は楽しい?」
「まぁ・・・楽しい・・・・です。」
「どうして言葉に間があるの?私だったら迷わず、”楽しい”って答えると思うわ。」
「楽しいの感じ方なんて人それぞれだと思いますけど・・・」
「それは、そうだけど・・・せっかくの3年間よ?”今”は人生の中でたった1回しかないのよ?」
「別に良いじゃないですか。なんで楽しいかなんて・・・!!」
俺はしまったと思った。
だって・・・彼女は・・・・・
「私、なかなか学校に行けないから・・・。ごめんなさい・・・」
「いや・・・俺こそスミマセン・・・。」
「良いのよ。私は他の人にとってのあたりまえが・・・できないから。慣れっこよ。」
そう言うと、彼女は笑顔を見せてくれた、が・・・
俺には・・・
悲しそうな顔に見えた
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