* 2013-05-08 22:22:32 |
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――…すごい、なあ。かっこいい、
(店に入ってから良く来店する御客の男性の方へと歩み寄って行く人気の高いキャバ嬢の立ち居振る舞いや一挙一動は美しく洗練されており、ナンバーワンの地位を築いている事も頷けるもので感嘆の吐息を漏らし店内の静かな音楽と同じくらいの声量で呟いて。瞼閉ざしヘルプで同席した際の彼女の気遣いや技術を脳内に思い起こしながら身が引き締まる思いで。ボーイの対応も素早く、先程戯れていた時や眠たげな様子は微塵も感じられぬ所作は男性客だけでなく稀に訪れる女性客に気に入られる事も納得でき。彼の足を引っ張らぬようにと膝の上で小さく拳を握り締めると緊張解すように息を吐いて)
ハナ、指名入ったよ。
(ある程度店内も賑わい人が入って来た頃、一人入店してきた客がハナの名を指名し。ソファに腰かけていた相手に声を掛け肩を優しく叩けば、客を誘導し立ち去り。さすがに休日でもあり一番人気がある時間帯の為仕事も多く、店内も熱気が籠り動きも多い己には少し暑く感じられ、長袖のシャツを店長に咎められない程度にまくり、服の袖で額に浮かぶ汗を拭えば、ドアが開き新しい客が入ってきたようで応対をしようと其の方を見やり。すると先程メールをして来た女性客で、内心憂欝に思いつつも表情には出さず笑顔で指名キャバ嬢を尋ね。席に移動する最中手を触られしつこく絡まれるも持ち前の冷静さでさりげなくそれをかわせば、手に残る不快感を消し去るかのようにもう片方の手で手の甲を擦り、バックヤードに戻れば軽く溜息をつき。
あ、…はい!ありがとう、
(徐々に御客が増え待機しているキャバ嬢達が指名を貰い出て行く中数人の内に残る事は一番の新人である己にとって特に珍しい事では無いが、ホールから聞こえてくる楽しげな話し声や笑い声を何処か上の空で聞いているもふと肩を叩いてくる力に顔上げると其れは待ち望んでいた言葉で。嬉々とした様子で表情綻ばせると立ち上がっては指名を貰った御客の元へと弾むように歩んでいき「こんばんは、花です。指名ありがとう!」隣へと腰下ろし仕事用の電話番号やアドレスの書かれた名刺を手渡し笑みを浮かべて。開いた扉から吹き込む外気は店内のものよりも冷えておりふと顔を向けるとボーイに絡む先日来店した女性客の姿があり動揺するも御客の話が始まると胸中のざわつきを押し隠し酒を作りながら相槌を打って)
...――――またお越しくださいませ。
(帰る客を店の出口で見送り、振り返り店内の様子をザッと見回せば先程賑わっていた時よりかは客数も減っており内心ホッとし。ふと奥の席を見て小1時間ほど前に来店した客が新人キャバ嬢であるハナと親しげに喋っておる姿を見れば、早く客に帰って欲しいと願う己の気持ちがありそのような気持ちを持ったことに驚き。新人だからつい過保護になっている所為であろうと早々に自分の気持ちに結論をつけるも、何処か違和感が拭えない為モヤモヤした気持ちを抱えたまま与えられた仕事を淡々とこなし。疲れているのだろうかと、バックヤードで自身の時計に視線を向ければ既に深夜と呼べる時間帯に入っており閉店時間まで残り僅かで。時間を確認した途端襲ってきた眠気を一時でも消すため、水道の水を一杯口に運べばパンッと頬を叩き、やる気を出しては残り時間少ない職務を全うしようと店内へと出ていき。
そうなの? 凄いなあ、…え-、ほんとに?
(指名を貰った男性の人の良さも相俟ってか、入社したばかりの頃よりも緊張は無く長時間殆ど初対面の御客と話すのを楽しいと感じられるようになったようで気付けばそろそろ閉店時間も近く。接客を終えたキャバ嬢は既にバックルームへと戻っているようであれ程賑わっていた店内も人は疎らとなり「今日はありがと。次もまた来てくれる?」ミニドレス故に露わになった脚に触れてくる御客の手をやんわりと両手で包むように握りそこから離しつつも帰る気配のない相手との会話を切り上げようとして。上手く誘導できないのか視線を店のママへと送るも彼女も接客中で手が離せない様子で困惑しながらも表情に出さぬようにと笑みを浮かべ。)
お疲れ様です 。
(接客を終え裏へと戻る途中のキャバ嬢とすれ違えば小声で上記述べ軽く会釈し。閉店間近となり客ももう数人という状態で、机の上に残っている皿やコップを片付けながら無意識に奥のソファを見れば、最近妙に気にかけてしまう新人がまだ客に絡まれているのを見つけ。表情が彼には珍しく険しくなれば、すぐに普段の営業用の笑顔に戻すも手早く机を拭き一度バックヤードに戻れば、客との会話が一時途切れたママの所へ向かい耳元で軽く状況を説明して視線を奥へと軽く向け。
――、…今日はありがと。気を付けて帰ってね?
(困惑したような控え目な笑みのままで接客を続けるも時折ママの方へと視線を送り、不意にそこに映るボーイの姿に閉店時間が過ぎようとしているのだろうと更に焦りは募るばかりで。すると接客中の男性を立たせ共に扉の方へと向かっていくも見送りを終えたのか此方へと歩んで来ると"吉田さんもそろそろ時間よ?話は次にしてくださいな。"等と穏やかに述べ御客の肩に隻手を置いて綺麗な笑みを浮かべていて。救世主の登場に安堵したように表情を緩ませると先程の彼が耳打ちしていた言葉が薄々と理解できたのか胸の中に柔らかな灯りが点るような温かな気持ちになり。御客と飲んでいた御酒が回ったのか僅かにふらつく足取りでママと共に御客を見送ると「ありがとうございます、ママ。」小さく頭を下げた後相手の姿を探して)
お疲れ様でーす。今日人多かったですね、――――。
(ママが上手くフォローし、入口で相手が客を見送っているのを安堵の気持ちで見届け、振り返り店内を見ると先程の客が最後だったようで、残っているのはキャバ嬢とボーイのみになり閑散としており。今日一日の接客業務が終わった事にとりあえず満足感を覚えながらも、一刻も早く帰る為他のボーイ達と共に後片付けを始め。一段落すればバックヤードへ戻り、各々着替えが終わったりメイクをとったりしているキャバ嬢達に声をかけ接客時とは違った素の笑顔で談笑し。やがて自分も着替えようとロッカールームへ向かい何よりも早く蝶ネクタイを外しロッカーへ押し込めば、さっさと着替えを済ませ荷物を纏めて、今日送るキャバ嬢を待つべくボーイ達に挨拶を残しロッカールームを出て。
あ…、お疲れ様です!あの、さっき…ありがとう。
(静謐としたホールに相手の姿は無くボーイのロッカールームに入る事が出来ない為早足でバックルームに戻ると籠る様々な香水の匂いに僅かに眉の形を曲げながらもドレスを脱ぎ気早に着替えを済ませて。店に残る事殆ど無い相手が早く着替えを終えたキャバ嬢を送る事は理解しており荷物を纏めると営業用の携帯を開き御客からのメールを確認するも返さぬまま「お疲れ様です-!」雑談や愚痴を零しながら緩慢と着替えるキャバ嬢達に挨拶すると軽く身嗜みを整えバックルームを出て。漸く相手の姿見つけると自然と表情は緩み駆け寄っては浅く御辞儀を述べるも又もや手間を掛けさせてしまった事に眉尻を下げつつ淡く笑み)
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