桜蓮 2013-04-05 23:46:56 |
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相変わらず、私の隣ではナンパ男がどうでもいいことをまくし立てている。
私は、小さく溜め息を吐きながら、人の波の中にいるその人を見つめていた。
前を向いていたその人がふと私の方に視線を向けた。
ぶつかるように視線が絡み合った。
その瞬間、私は身体が痺れたような感覚に包まれた。
ほんの数秒の出来事の筈なのに、長い時間のように感じる。
視線を逸らすことができずに固まったままその人を見つめていると数人の若い男の子達がその人に近づいていくのが見えた。
お世辞にも真面目そうとは言えない男の子達。
夜の繁華街でよく目にする人種。
一言で表現するなら“ガラの悪そうな人達”。
あの人に男の子達が声をかけた。
ガラの悪そうな男の子達は、その人に向かって頭を下げていた。
それはまるで目上の人に挨拶をしているようにも見えた。
…知り合いなんだ…。
私は、一人で納得した。
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