メカクシ

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ヒビヤ  2012-08-22 00:19:39 
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まぁ・・・暇だったら・・・読んでよ・・・

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  • No.5 by ヒビヤ  2012-08-22 01:32:33 

■8月16日 13:00 『実験都市裏門前』 キド

 そして作戦当日がやってきた。傷付いた人造人間達の看護を担当する人間が必要だった為に、
今回は更に昨日よりも人数が減り、合計で20名程度。
ルリにも今回は人造人間達の『治療』に当たってもらう事にした。
 裏門にエネが入ったスマートフォンを繋ぐと、彼女は一瞬で何万パターンもの演算をし、
結果、あれだけルリが手こずっていた『裏門』は僅か3分程度で開いてしまった。
どれだけコイツは高スペックなのだろうか。
 『研究施設』まで『人造人間兵士団』の襲撃はなかった。
『施設内』の警備を固めていると考えているのが妥当だろう。
俺達は昨日のように、『実験施設』前で二つのグループに分かれた。
 レベッカを筆頭とする『メカクシ団15名』には、
『囚われの人造人間の救出』に当たってもらう。
俺はハンドサインでレベッカにエールを送った。
 今回のメインミッション、『可能性世界』からの『ヒビヤヒヨリ救出』及び、
『あの目との対決』、あとこれは出来れば避けたいが、『白衣の科学者と人造人間兵士団との抗争』
を担当するのが俺達という事になる。
 まずは俺、キド、昨日と同じメンバー、カノ、ジャン、マリー。それと今回はトガ。
今日から加わったのが『電脳体』エネ、『コノハに会いたい』Cだ。
特にエネは今回の作戦において重要な役割を担うだろう。
Cの方は名前が呼びにくいので、これからはシー子とでも呼ぼう。

 俺達は細心の注意を持って、『白衣の科学者の研究施設』へと潜入した。
 30分程度の潜入過程において、一度も『白衣の科学者サイド』の人間や『人造人間』と
全くすれ違わないのは出来過ぎである気がした。
『作戦』自体が読まれており、
この『研究施設』そのものが『巨大なトラップ』となっている可能性も否定出来ない。
 しかし、今はただ進むよりない。
 バルブ式の厚い鉄扉を押し開けると、そこには『街並み』の模型のような物が置いてあり、
その上からホログラフィックが投射されているようだった。研究室は『無人』だった。
「これが『可能性世界』――?」
 シー子が呟くように言うと、
「多分ね」
 とエネが短く返した。
「キド。ここまで無人っていうのは出来過ぎていない?」
「『白衣の科学者』は案外真っ向から俺達を叩くつもりなのかもな」
「どういう意味?」
「要するに『あの目』とかいう人造人間によっぽど自信があるんじゃないか? 
 今から俺達は『可能性世界』に侵入する訳だが、
 そこで『あの目』に無限回殺される運命に囚われてしまえば、
 後はそのまま実験終了まで俺達をそのままにしておいて、
『可能性世界』ごと俺達を投棄すれば一番手っ取り早いじゃないか」
「まあ、それを許さないように、俺とエネで団長たちを上手く『可能性世界』に入れてやるからさ」
「任せたぞ、トガ」
 『天才少年』であるトガと、『電子体』エネは相性が良いらしく、
 今回は彼らに『電子戦』を担当してもらう事になる。
 トガは、エネの端末を可能性世界を形作る模型に繋げた。
「どうだ? エネ。行けそうか?」
「『可能性世界』は確かに『あの目』が造った物だけど、それを『保持』しているのは、
 あくまで電気的な『バッテリ』みたい。莫大な予備電力をここに投入してるみたいね。
 だから、昨日キドたちが侵入した時にも復旧が遅かったのか……。
 ――。――――。出来たわよ」
「流石電子体。天才的だな」
「もっと褒めてくれても良いわ」
「トガ、エネ。どうなったんだ? 俺達は『可能性世界』に侵入出来るのか?」
「そこのホログラフに飛び込めば、『可能性世界』に入れる筈よ。『実体』を伴ってね。
 それからCはこれを持って行って」
「これは?」
「キドたちが『可能性世界』に入ったら、私達が『可能性世界』のコントロールを奪うわ。
 その隙に、『コノハ』にこれを渡して。メモリスティックで、現実と『可能性世界』を直接繋いで、 コノハに『物理干渉の権利』を付加するから」
「これがあれば、コノハは『あの目』に立ち向かえる力を手に入れる、って事ね!」
「端的に言えばそういう事」
「じゃあ、皆、準備は良いか? うんざりするような悲劇も、そろそろ幕にしよう。
『可能性世界』で『あの目』と決着を付ける」
 その場にいる全員が頷くのが見える。俺も頷き返すと、
一斉に『可能性世界』のホログラフの中に飛び込んだ。

■8月16日 14:00 『可能性世界』内 メカクシ団

 エネはキドたちが『可能性世界』に突入すると同時に、
『可能性世界』のコントロールを『あの目』から奪う。
「これはちょっと……キツイわ、ね……」
「エネ、何があった?!」
 トガが端末の中のエネの姿を確認すると、エネが右手から『黒い影』に侵食される様が確認できた。
「これは……」
「『あの目』が即座に『コントロール』を奪い返そうとしてる。
 だけど……もし、私が『コントロール』を奪い返されたら……
『あの目』は『可能性世界』を創った存在なのよ! 
 キドたちは『無限に殺され続ける』運命から逃れられなくなる!」
「エネ……」
「耐えなきゃ……一秒でも長く……」


 『可能性世界』に入る時、私、Cは潮騒の音を聞いた気がした。
 あれは過去の記憶――。
 きっと、一人だけで新しい水着を試そうとしたのが悪かったのだ。
友達と連れ添って行けば良かったのに、私は新しい水着を試すのを我慢する事が出来なかった。
 準備運動もろくにせずに海に飛び込んだ私は、かなり沖まで泳ぎだしたその時に足を攣らせ、
そのまま溺れて水中に没した。水を大量に飲み、口から酸素が逃げ、やがて意識も遠くなり――。
 次に目を覚ました時には、私は白濁した意識の中で、どこか地面に横たわっているようだった。
 その時、私の顔を、ぼたぼたと熱い涙が濡らした。
きっと、助けてくれた人が流しているのだろう。なんて、人が良いんだ、この人は――。
 助かった私という生命に、感謝でもしているのか。
 その暖かい涙は、いつまでもいつまでも私の心から離れず――。

 だから、そこにいるのが間違いなくコノハであると、私にははっきりと分かったのだ。
「コノハ」
 雨に打たれ、ヒビヤの精神の死に打ちのめされたままの周回21900回の彼が、
まるで有り得ない物を見るかのように私を見た。

「君は……まさか……。

 生きていて、くれたのか…………」

 ヒビヤの死とはまた違う涙をボロボロと零す彼に、私は、

「本当にあなたは……泣き虫なんだから……」

 と言った。

「あなたに涙は似合わない。ヒビヤを救って、コノハ」
「し、しかし、私にはどうする事も……」
「『物理干渉』さえ出来れば、あなたはこの世界では何でも出来る。違う? 
 エネって娘からあなたにプレゼント」
 メモリスティックは、『可能性世界』では朧げな光に包まれた球体のような姿になっていた。
 私はその球体を、コノハの胸に押し付ける。
 光の球はコノハの胸に静かに沈み込み、彼のぼやけた輪郭が、
 次第にはっきりしていくのが分かった。
「君の名前は?」
「Cっていいます」
「C。私は、失った物を取り戻してくるよ」
「行ってらっしゃい!」


 再び『試行』される『可能性世界』周回21900回。『ヒビヤ』の限界地点において、
私『コノハ』は、『雨』により『陽炎』を消し去り、そして……。
「ヒビヤ! 君の戦いはもう終わったんだ!」
 道路に踏み出そうとするヒビヤの身体をしっかりと抱きとめる。
 そして、この瞬間、21901回以降の『可能性世界』がαからβに書き換えられる――。
 『可能性世界』は、今この瞬間、21901回以降も『ヒビヤが生きている可能性』を許容した。


 同時に、現在の周回、終わらないループの中で『あの目』に殺され続けていた、周回33000回の『ヒヨリ』の隣に、彼女を守るべく『ヒビヤ』が出現する。
 彼は自身を盾にするように、ヒヨリと『あの目』の間に立った。
「ヒビヤ?! どうして?」
「俺にも良く分からない。何か白髪の男の人が助けてくれたんだ。
 それで何か俺が生きている事の方が『正しい』事になったらしい。
 とにかくアイツにこれ以上お前を殺されてたまるか!」
 『あの目』は忌々しそうに言った。
「何か邪魔が入ったな……異物が混入した……全く苛つかせてくれるぜ……」
 『あの目』はすぐさま力を振るってくるかと想われたが、
何かの影響により、ヒビヤたちに『無条件の死の運命』が宣告される事はなかった。
 しかし、『あの目』はその代わりに周囲に何十体もの、『陽炎』を展開した。
「嘘……」
「一体だけでも殺され続けてたのに、あれって複製可能だったのかよ……」
 うんざりしたように呟くヒビヤの前に、
今度は突然、フード付きのパーカーを着た、四人の男女が現れた。
「お前たちの悲劇を終わらせに来たぜ」
 皮肉げな笑みを浮かべる、緑髪赤目のシャープな印象の女性は、
ヒビヤが子供の頃から思い描いていた、『ヒーロー』そのものの姿だった。
「格好良い……」
 呆然と呟くヒビヤの代わりに、ヒヨリが尋ねる。
「あなたたちは一体……」
「俺か? 俺達は……まあ、正義の味方のような物をやっている」

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