匿名だったもの 2012-05-22 12:22:14 |
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目を開けると、真っ暗な部屋。ぼんやりと見える電灯と天井が、いつも寝ている和室だということを認識させた。
そして、右腕に違和感。違和感とはいうものの、原因は判りきっていた。一歳を過ぎた娘の重さだ。
彼女は甘えん坊なのか、不安なのか、夜は腕枕をしないと寝てくれないという、困ったちゃんなのだ。朝起きた時に腕が痺れている、ということが日常茶飯事だ。
良く見えないので耳を澄ますと、隣からは規則正しい寝息が聞こえてくる。彼女の寝息を聞きながら、また寝ようと目を閉じた。
しばらくして、妙なことが起きた。和室の扉が開いていくような気配がするのだ。私達は和室の入口側に頭を向けて寝ているので、それが良くわかる。そして、こんな真夜中に訪問者がいるわけがない。
早鐘のように鳴り出した心臓。恐怖と葛藤しながら薄目を開ける。
そこには何故か、実家にいるはずの父が居た。いつの間にか私達の枕元に置いてある、大型の日めくりカレンダーを持っていく。そこには大きく『8』という数字が書いてあった。
(7月か8月のカレンダーか……)
混乱した頭で、そんな訳のわからない事を考えた。
父が居なくなったあと、しばらくして、また気配がした。
今度は真っ黒な仏像だ。全身が黒光りしているそれは、入口から部屋の中を伺っている。
(これはヤバイ!)
霊感ゼロの自分が嫌な気持ちになってくる。相当ヤバイ。怖い。娘よ起きてくれ、助けてくれ。
そんな都合よく、起きてくれる訳も助けてくれる筈もない。だいたい、起きたところで一体何が出来るというのか。
そんな葛藤を知ってか知らずか、それは部屋を眺めているだけで入っては来なかった。
しばらくして、玄関が開く気配がする。アレが帰っていく気配だ。
途端に体が動いた。
部屋を飛び出し、玄関を開ける。
外は薄明るくて、靄がかかっていた。
黒い後ろ姿が視界に映る。私は後ろ姿に向かって叫んだ。
「いやなもの全部持って行って下さい!」
それは、ゆっくりと振り返った。
振り返ったそれは、仏像では無かった。頭からすっぽり黒いマントで包み、顔の部分だけ丸く抜かれている。抜かれた顔の部分には顔は無く、たくさんの布の端切れのようなものが覆っていた。
それは振り向いたまま頷くと、ゆっくりと去って行った。
私はそれを見送った。
私はヤ○ダ電機っぽいところに居た。
正確には、そこの駐車場というべきか。どうやら、これから此所で何かのショーが開かれるらしい。周りを見ると、子供連れの家族がちらほらいる。
しばらくした後、ショーが始まる。某子供番組の着ぐるみが、歌い出した。
盛り上がる少人数のお子様達。そんな中、ふと知人の姿をみかける。
知人はそのまま階段を上がっていってしまった。
なんとなく、後をつけて階段を上がると、そこはドラ○エの宿屋みたいになっていた。
そして、ベッドには中年男性が血を流して倒れていた。
……まさか殺人事件に巻き込まれることになろうとは。
そこは、廃村になる予定の村。山に田んぼに点在する家。どの家も昔ながらの、青や赤のトタン屋根。これぞ田舎、というような景色が広がっていた。
そんな山奥の村で何故だかカーレースが催されるということで、私達は訪れたというようなことらしい。
「この村が無くなっちゃうなんて残念だね」
無くなってしまうものはどうしようもない。私達はすべての家の写真を撮っていく事にした。そうすることで、記憶と記録に留めておけるから。 お互いカメラを手にして、別々に撮り始めた。
急にふと、小学校時代の同級生を思い出す。仲の良かった訳でもない子。その子と蓮の花畑のイメージ。
……そうして舞台は一軒の建物の前に変わる。
そこは3階建ての古い家で、彼女は何年か前に嫁いだということだった。
蓮の花畑を屋上で作ってる、そう言って笑った彼女は、学生時代と変わらない顔をしていた。
そんな彼女の身に迫った危険。それを回避する為に、私はデパートの屋上にあるような、寂れたゲームコーナーに赴く。
誰もいないゲームコーナー。その中を横目で見ながら目的のモノを発見。100円を入れると前後に動くだけの、パンダの乗り物だ。
100円を入れてゆっくりと座る。
前傾姿勢になり、正面を向き強く念じると、眼前の光景が変わってくる。
景色は歪み、捻れ、渦を巻き、黒と青の入り交じった空間が出現した。
……そうして、私は彼女を助ける為に、時間を越えた。
気がつくと、あたしはリナ=インバースだった。
……ってオイ待て。なんで?
ヤバイ。マジだこれ。懐かしすぎる。栗色の髪に愛らしいくりくり眼、ショルダーガードにマントにバンダナに……間違いない。
とりあえず辺りを見回すと、なんだか大きな建物の中に居るのはわかる。しかも、どうやら追われているみたい。
普段のあたしなら、そこらへんの破落戸くらいなら追ってむしりとる側なんだけどなー。如何せん夢の中だし、リナ=インバース初挑戦だし。仕方ない。
あたしはとりあえず、流れを壊さないように逃げ出した。
リナちゃんエライ!
っと、そんなこと考えてる場合じゃなかった。
あたしは露店の隙間に滑り込んだ。露店のおっちゃんがいぶかしげな顔でこちらを見ている。
おっちゃんゴメン。あたし邪魔だね。
でも状況が状況だからカンベンして、とおっちゃんにウインク。何故だかおっちゃんは不快そうな顔をしてそっぽを向いた。
……何か腑に落ちないけど、わかっていただけたなら何より。
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