青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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青葉:バカなら出来る?
周辺の人に危険を知らせるため、さらに悪魔を退治する悪魔祓いを呼び寄せるため、一石二鳥を考えた鐘の音。しかも、その鐘は実在しない。実在しない鐘を悪魔の中に存在させるなんて特殊技能中の特殊技能だよね。そういうことは能力の高い人の方が出来そうだけど。
木山:俺もそう考えた。だから、
バカにはできないよ。バカはバカだもん。
と子供らしい反論を投げた。悪魔祓いに羨望を感じていた気持ちも手伝ってな。
それには、ナイトメアはこう返してきた。
そうでもないのよ。悪魔祓いはバカじゃないとなれないの。上級になるとなおさらね。まあ、人間のあなたにとっては、バカとは思えないのかもしれない……
あなたもなりたいの?悪魔祓いになりたい?
俺の反論に対してのナイトメアの言葉は、よく意味が解らなかった。そして、俺に悪魔祓いになりたいのかを訊いてきた。
青葉:どうだったの?なりたいと思った?
木山:そんなことは訊かれるまで考えもしなかった。つまり、悪魔祓いになりたいと思ったことはなかった。だけど、俺は頷いた。
青葉:何故?
木山:何と言えばいいかな。その場の雰囲気というか……。迷った時に、つい頷いてしまうことってあるだろう。そんな感じさ。
青葉:ナイトメアはどんな様子だった?自分の天敵になりたいと言う子供に対して。
木山:特に怒ったりはしなかった。
あなたは悪魔祓いになって、あたしを消滅させる権利があるものね。
でも、この国では悪魔祓いの需要があまりないんじゃないかしら。将来のことを考えたら他の職を探した方がいいと思う。もしくは、あたしの故郷で悪魔祓いをやるのね。
そんなことを言った。
青葉:けっこう真剣に考えてくれている印象だね。人間味がある。
木山:そうなんだ。人間の将来を気にするなんて、悪魔のくせに悪魔らしくない。
青葉:それより気になるのは、
消滅させる権利がある
とはどんな意味?
木山:ナイトメアは俺のおじいさんの命を食べている。だから、孫の俺には復讐する権利があると言ったんだと思う。
あの時は俺も深く考えずに聞き流したけどな。
青葉:そういうことか。
木山:俺の将来の話はそれで終わった。
その後、ナイトメアは、狩りをする毎に悪魔祓いに追われることに命の危険を感じて、故郷を捨てたことを話した。鐘が鳴っても悪魔祓いの来ないような遠くの地に行こうと決めたが、あてはなくただ遠くに遠くに逃げて、たどり着いたのが日本だったと言っていた。
肌の色も目の色も髪の色も違う人間達を見て、ずいぶん故郷から離れたことを実感したとも言った。
ナイトメアは、都会より田舎を選んで、人里離れた山の中に入った。そして、伯母や母の住む山村で狩りを始めたんだ。一人目を狩って、鐘の音が山中に響いても悪魔祓いはやって来ない。二人目、三人目と狩っても同じ。四人目、五人目になっても悪魔祓いは姿をみせない。
これはいける!と、ナイトメアは思った。この国では悪魔祓いはいないと。山村の人達を皆殺しにして、またどこか同じような山をみつけて、同じことを繰り返して、この国に根を下ろそう。そう考えた。と言った。けど、
でもね、そう簡単にはいかなかった。
とトーンを落としてナイトメアは言った。
青葉:鐘の音は五回。快進撃は続かなかったわけだからね。
木山:ああ。
そしてナイトメアは、
まさか、あんな奴がこの国にはいるなんてね。
と言った。
その言葉を聞いて、俺はピンッときた。
あんな奴とは、地下の扉から出てきた、あの丸々太った男のことだと。
そして、あの男の正体は悪魔祓いなんだと。
俺は得意気に言った。
悪魔祓いはこの国にもいたんだね!地下の扉から出てきたデブの男の人は悪魔祓いだったんだ!
と。
するとナイトメアは、
この国で、あたしは悪魔祓いには、まだ会ったことがないわ。
あなたが言ってる男が誰を指しているかは分かるけど、奴は悪魔祓いじゃない。
と薄笑いを浮かべて答えた。
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