用心棒の小娘 2024-10-05 18:32:43 |
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──跪け。
(元より、多少見目の良い石ころを鼻先へ転がしてやった程度で容易く尻尾を出すような小鼠に籠絡される程、命知らずな愚昧とは本気で思っていない。…ただ、見えぬ首輪の点検に少し鎖を引いたまでのこと。此方が少し背を見せれば途端に弱気が襲ったらしい声を受け、振り返り様に靴裏で地を叩き威圧的な音を浴びせる。もしも相手が命に従ったのなら、一層身長差の開いた距離を僅かに腰を屈めて埋め、緩慢に手を伸ばす事でその頭に触れるだろう。常の静謐な面貌に繕いはないが、声音だけは一転して柔く室内に響かせ、弱った心根に深く染み入るように。例え元凶は自身であっても、他に頼る縁のない者にはこの手の単純な懐柔が存外効くものだ。哀れな少女の頭部を愛でるまではせず、あくまでも軽い接触に留まる手を引くと背筋を伸ばし。さして大きな期待までは孕んでいない、澱のように淀んだ瞳を静かに対面へ落として)
イイコだ。……今日は良くやった。さぞ疲れただろう。洗い場で汚れを落としたら、部屋に戻ってゆっくり休め。
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