『蚕繭』 2024-08-25 20:21:07 |
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(/大丈夫ですよ~~!!
お話についても了解です!何事もリアルが資本、健康が資本です故、此方の事はどうかお気になさらず、また話せる時に楽しくお話致しましょう!)
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( 開いた資料の頁はどれも動物や花の項目。膝を立てて座る己の周りを囲う形で広げたそれを時折捲っては、先程よりも声量も明瞭も落ちた曖昧な呟きを半開きの口の端から溢す。最早何を発しているかも解らないそれと共に生産されるラフは、同じくぐしゃぐしゃと線が曖昧で、手と紙を汚していくばかり。――それがぴたりと止んだのは、本格的に思考に沈む前に聞こえた声の所為。上げた視線が捉えたものは今し方床に放った画案の一枚と、それを眺める孔雀の彼。ほんの数秒程、かっくりと首を大きく傾げた後、「……それはヒヨコです。」絶対使わない英語のテキスト文でも読んだのかというようなシュールな一文が、今度はきちんと人に届く形を持って喉を通る。「そっちが犬、こっちがタンポポ、そこのが桜貝、です。」そのまますっかり黒く染まった手に持つ鉛筆で彼の足元や自身の真横にあるラフ画を順に差して、床を埋めるそれらの紹介を終えれば腕はしゅるしゅる縮こまり。「…アンタと居た人に、“可愛い”絵が欲しいと頼まれています。」それからまた不意に始めるのは、帰路の道中彼へと流しかけたあの女性の依頼の話。「具体的な注文も訊いたのですが、“可愛いもの”としか言ってくれませんでした。困ります。あの人の“可愛い”はオレには解りません。」恐らくは愚痴のつもりなのだろう、不満をぶつけられているスケッチブック上の鉛筆は、何とも言えない不定形な円を描き過ぎて紙を突き破りかけている。「……春翔さんは、あの人の“可愛い”、解りますか?」一通り吐き出し終えたその後に、傍らの彼を髪の向こうからじっと見詰めては、思考の助け船を求めて問い掛ける。)
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