東 2024-07-20 01:24:27 |
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親か。……またあとでな。
(謎の目線でアドバイスしてくる東にツッコミを返して進む。右腕に装着したリストバンドをくるくると手首を返して見つめながら更衣室へ入ると夕暮れ前ながらぱらぱらと人がいた。顔面に刻まれた皺や頭髪具合から同年代はいなさそうで、少しだけホッとした。
備え付けの自販機から大小のバスタオルと使い切りのボディソープにシャンプーリンスを買い足す。咄嗟に財布を探そうとしてそもそも紙幣硬貨の投入口が無いことに気づいた。
そうか、リストバンドか……。右腕をあげてタッチしてそれらを回収。荷物を突っ込もうとロッカーの取っ手を引く。開かない。
リストバンドか……。先に登録して閉める感じなのか? さっきから何気にめんどくさいな……。どうやら俺は未来には住めないらしい。ドライヤーは備えついてるしシャツはあとでドライヤーすればいいか。まとった衣類はある程度形を整えて仕分け用のカゴと一緒にロッカーへ。
それにしても男しかいないとはいえ裸でうろつくって微妙だよな……。鏡に映る貧弱な肉体を尻目に奥へ。
ガラス戸のしきりは大きく二つで、開けっ放しとならないように引き戸と押し引きタイプだ。浴場へつながる引き戸――今度はちゃんと手動だ――を引くとムッとした熱気が身を包んだ。知らず冷えきっていた身体にはむしろ心地良い。入ってすぐ左手側に積んである丸い桶を手にとった。
まずは身体洗うんだよな……。と、正面に丸い巨大なツボのようなものが鎮座してる。柄杓つき。
なんだこれ……。胡乱げにみつめていると柄杓を手に取って身体にかけていく親子。
なるほど、掛け湯か。親子が終わってからソワソワと柄杓を掴んで背中側にかけていく。心地よい温かさが身を包む。あー……マジ冷えてたんだな。数度掛け湯をすくって身を清めると洗い場へ。なんとなくあいている隅をみつけてバスチェアに腰を下ろす。シャワーに湯口、小さな姿見。そこにうつる自分の顔は思ったよりくたびれていた。…………こんなツラして東の隣歩いてたんか、俺は。つくづく、似合わない。そんなことを思ってシャンプーを泡立て始めた。)
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