東 2024-07-20 01:24:27 |
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うぃ。……あ。
(軽く返事をして平の横に並んで歩き始めながら、カバンを体の前に回して受け取ったばかりの折り畳み傘を仕舞おうとした。この様子じゃ当分必要なさそうだし、両手が空いてるに越したことはない。ポーチやテキスト類が濡れないようにしっかりと区切られた内ポケットに仕舞おうとしてポケットのチャックを開けたら、さっき平に借りたハンカチが目に留まる。後日洗って返すつもりだったけど……あそこの健康ランド、洗濯機あるじゃん。入浴してる間に洗濯から乾燥まで終わりますって案内が貼ってるのを、前行った時に見た気がする。てことはハンカチも洗えちゃうってことで──せっかく平のクラスに行く口実ができたと思ったのに、あっさり潰された。内心ちょっとがっかりしながら溜息をつき、傘を専用のカバーに入れてから別の内ポケットに突っ込んでカバンを背負い直す。)
やんでくれて助かったけど……キライってわけじゃないんだよなー、雨。……たまになら。
(ちょっと涼しくなった雨上がりの空気を全身で感じるように軽く両手を広げて歩きながら、空を見上げて呟く。たった今こうやって平と並んで歩けてるのもさっきまでの大雨のおかげだと思うと、嫌そうな顔してた平には悪いけど、ぶっちゃけ私はちょっとだけ雨にお礼言いたい。……まあ限度はあるけど。2回も傘壊すとかいう強烈な思い出ができたし、今後雨が降ったら暫くは平の顔が浮かんできそうだ。いや、降らなくても考えてるか。
ハンカチを返すためだとか、びしょ濡れになった身体を暖めるためだとか。私らは“会う理由”がないと会えないし、一緒にいられない。クラスが同じって理由がなくなったから、会う回数も減った。当たり前だ。会いたいって思ってるのは私だけなんだから……わかってる。わかってるからこそ、些細な口実が有り難くて惜しいんだ。入浴が終わってハンカチも返し終わったら、次はいつ話せるんだろう──、)
いぇ~い。とうちゃーく!
(──なんて、早くも終わった気になって切なくなってしまった。いかんいかん。もっと楽しめ私。切り替えるように明るい声を出しながら、前方に見えてきた目的地を指差した。)
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