東 2024-07-20 01:24:27 |
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……………………よかねーわ。いや、良いんだけど……ったー、マジかよ………。
(東の呟きに俺は超音波のような声でそう洩らした。一瞬、いやふざけんなよって思ったがそういえば東にはもうすぐ雨が落ち着いてくる、とか言ってたんだっけか俺……いやそんな事あるか? 予報みた感じ今日一日はこの雨が続くでしょうみたいなノリだったじゃねぇかよ……。
恨めしく見上げた天空は遥か高く、ただ座視するだけの俺を尻目に黒々としたく積乱雲が渦高く巻き上がっていく。
言葉が現実になるとかステキだよな。これ俺が得する案件ならぜってぇこうはならないんだぜ……。神の掣肘。いや、神様っつーかこの場合お天道様か? 俺のことキライだろ絶対。
東が差し出した傘――俺が買ったやつだ――を無言で受け取って、折りたたみ傘を簡単にまとめた。水気を大いに吸ってしなしなとした布は頼りなさげに揺れて俺の指先を嫌がった。)
ん。……まーいくか。これで外出た瞬間に裏をかかれてもソッコー傘で対策できるしな……。
(俺は神を信用せん……。少し不格好にまとまった折りたたみ傘を東に差し出しつつ、そんなことを胸中で大いにごちてから玄関口を出た。そしてなだかな階段を踏みしめながらふと、先程の東の様子を思い出して、わずかに。ほんのわずかに口角を上げた。――ま、おまえはやっぱりそういう顔の方がらしいぜ。そんな事を思って気持ち歩調を緩やかに足を進めた。この分なら目的の健康ランドにはすぐつくだろう。)
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