東 2024-07-20 01:24:27 |
|
通報 |
――…………ふぅ。
(喉を鳴らす。数度水を体に流し込んでから東の反応を一瞥して。俺はようやく息をついた。いや、むしろこれは安堵に近かったかもしれない。
よかった。合ってたみてぇだ……。
そんな安堵からくる吐息が口の端からするすると抜け出たのだ。
色んな可能性があった。
たとえ同じものを見つけたとして、東が受け取らない可能性。
または落としたものに何か思い入れなり意味なりがあって代替品では喜ばない可能性。
さらにそもそも俺の記憶違いで、見つけてきたクマが違うやつな可能性。特にこれに関しては朝、登校するまでのわずかな時間にみただけであり、多分に自信がなかった。
俺はポケットから例の赤白ボーダーのクマを取り出す。しっかりとデザイン覚えていられたのはもらったコイツと東のとを比較するように何度もみたからだ。まるで正反対なお前らのカラーリングが――成程どうにも俺と東にもあてはまるか――なんて。そんなことを思ってしまったのだから。)
……~~ッ……――また失くしてもしらねーからな。
(いや。いやいやいや。それにしたって。なんだ。喜びすぎじゃね? 東のやつ。なんだその顔。
俺はついなんだか自分のした行動が無性に恥ずかしいことだった気がしてきてとっさにそう悪態づいた。
いや、そりゃ思ったよ? さっきまでの無理して笑ったようなツラは似合ってねーよって。あ、違げーからな? 『お前には似合わない』とかいう類のカッコつけのセリフじゃねーぞ念の為。見たこともない面して無理に笑おうとすんなよっつー話。
それはまるであの時と同じで。自分ばかり損してそれでも笑おうとする様によく似ていて。俺にはそれが、我慢ならなかったのだ。俺が、俺の為に、見たくもない表情を消したかった。それだけの話。……そう、ただそれだけの話だ。)
| トピック検索 |