東 2024-07-20 01:24:27 |
|
通報 |
はっ……はっ……!
(――アホらしい。実にアホらしい。自分でそう思う。走る足は水に取られて重たくて。背中はリュックづたいに水が入る気配を感じる。なんでこんな必死になってんだと思う。柄じゃない。誰かのためになんてカッコイイことが言えるようなキャラでもない。だから、これはきっと自分のためなんだ。水びたしで、走り方はきっとみっともなくて、脇腹まで痛い。運動不足は否めないがそこは受験生だ、脇腹にはもう少し我慢してもらいたい。やがて、そこに辿り着いた時にはもう息も絶え絶えで。――そういや、朝も走ってなかったか俺、なんて思うとしばらく穴蔵にでも篭もりたい気持ちになってくる。まあ、とにかく目的地には着いた。あとは――……。)
――……っ……はぁっ……。
(あとは、そう。結局走るわけだ。コンビニで買った頑丈そうなプラスチック傘【1,408円+108円:たけぇ!】を差しながら悠々と歩いて――いけるわけもない。東に何も言わずにでてきてしまった。先に健康ランドに行っててくれるならいいがなんとなくだが――いやもう確信しているが絶対待っている気がする。となればのんびり歩みを進めている場合ではない。さすが、折れないなんて表記にあるだけあって傘は丈夫そのものだ。少なくとも走りながらでも風雨は完全に防げている。……既に濡れ坊主だが。コンビニ店員にギョッとされたが。今から傘差す意味あんのお前って顔されたが。うるせぇ。あるんだよ。
そうこうしているうちになんとか地区センターまで戻ってこれた。っと、呼吸整えないとまた余計な気遣いされちまうな……。
俺は深呼吸を数回しながら玄関口への階段を踏みしめた。……さて、待ってるんかな。そんなことを考えながら。)
| トピック検索 |