東 2024-07-20 01:24:27 |
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! おい、アズっ――。
(名前を言い切るよりも早く。俺が落としたキーホルダーを追って外へ飛び出していく東。その俊敏さたるや、胸中で「また落ちたのかお前……」などとクマにごちて辟易していた俺とは大違いだ。
戻ってきた東は案の定というべきか鵐に濡れている。顔も心なしか赤いし……熱でもでてんじゃねえよな……。
それなのに。そんな事はどうでもい良いとばかりに件のキーホルダーの汚れを払う東。それは、とても大切なものを扱うように。)
悪りぃ……なんかどうも地べたが好きみたいでな、そいつ。出会いからこっち何回も俺の手からすり抜けやがるし……いや地べたが好きってより俺がキライなのか……? ありうるっつか言葉に出してみるとその可能性の方が高くね……? 物には魂が宿るとかいうし俺だってキーホルダーなら俺のところにはいきたくねーっつーか……ブツブツ。
(とめどなく沸いてくる可能性に鬱々とした気分になりながらも、キーホルダーを受け取ろうと手を伸ばす。が。なんか引っ込められた。いや、『いらんか』って。そりゃいるかいらないかで言われりゃ別に執着するほどの付き合いはない。何度も落としてるしな。ただまあ。拾ってつまみ上げた際にお前も大変だな、みたいな。持って生まれた不遇な色合い。劣等感――あのクマがそう感じてるかは知らんが――に親近感を抱いたのも事実だ。いや、勝手に劣等感だとして親近感寄せられても迷惑かもしれんが。
そもそも東もおかしくね? なんで一度あげたもんを引っ込めるんだ……。
俺は自分のハンカチを無言で東に差し出しながら、意図を計るべく顔をまっすぐにみつめた。)
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