東 2024-07-20 01:24:27 |
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あっ……、
(キーホルダーを探してるのがバレたところまではまだいい。問題は、探してる理由をどう答えるか……なんて考え込む暇もないまま、私に何か言いかけた平のポケットから見覚えのある物が落ちて段差を転がっていくのを目撃した。なんとも派手な、特徴的すぎるパッケージ。一瞬の出来事でも、今朝私が買ったばかりのそれを見間違えるはずがなかった。
ぼーっとしてる平より先に足が動いて、気付けばキーホルダーを追いかけていた。って言ってもキーホルダーは階段下で止まってるし距離も短いから、実際は追いかけるってより拾いに行くの方が正しいかも。落ちていたキーホルダーを拾い上げて平のところまで戻ってから、パッケージについた水滴や汚れを軽く手で払う。持っていたハンカチは、さっき髪とか拭いた時にビショビショになってしまって使い物にならない。汚れを落としながらパッケージ越しにまじまじとクマを見つめ──普通こんなの落としたからってわざわざ大雨の中探さないよな、と改めて思う。それが、平も同じ物を持ってるってだけの理由で普通じゃなくなってしまうんだから……勝手に照れくさくなって、顔が熱くなった。同時に、私の分はもうないんだと思うとちょっと切ない。)
平まで落としてどうすんの──いや、いらんか。
(汚れを払ったキーホルダーを平に返そうとしたけど、そもそも平はこんなのいらなくね?って気付いて伸ばしかけた腕が途中で止まった。そもそもこれは私が無理やり押し付けた物で、お揃いだとか繋がりができたとか勝手に喜んでたのは私だけなんだ。なくしたら探そうとするのも落としたら拾おうとするのも、私だけ。だから平は動かなかったのかも──そう気付いたら今度こそ受け取って貰えない気がして、断られる前に自分から引っ込めてしまおうとした。)
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