東 2024-07-20 01:24:27 |
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平……っ!
(何も出来なかった。何がなんだかわけわかんないまま、平が私を無視して階段を下りていく。そうだ、無視。こっちを振り向いてたのにまるで私のことなんか見る気ないみたいな顔して何かを考え込んで、かと思ったら私なんかこの場に存在してないみたいにさっさと1人で歩き出してしまった。さっきと同じ、完全な拒絶。微かに声を絞り出しながら右手を伸ばしかけたけど、ショックで私の反応が遅れている間に平の背中はどんどん小さくなっていって、とうとう人混みに紛れて見えなくなってしまった。
今からでも走って追いかけるべきなのか──そんな選択肢がほんの一瞬だけ頭を過ぎったけど、私の足は動いてくれなかった。こんなにも明らかな拒絶を見せつけられて、その原因もわからないのに追いかけてどうするんだって思ったから。他でもない平が私に近付かれることを拒否してるのに、追い縋るとかそんなの出来るわけないじゃん……。
あーあ。何でこんなことになってるんだろ。ただでさえ平との時間、残り少ないのにな。私、平に何かした?したかしてないかで言えば間違いなく今朝からやらかしまくってはいるけど、あの平の感じは絶対そんなんじゃなかった──うまく言えないけど、それだけは何となくわかる。隠す相手も強がる相手もいないと思ったら今度こそ瞳が潤んできて、紛らわすように俯きながらゆっくり歩き始めた。涙を堪えるために、一歩一歩を大袈裟に踏みしめながら。)
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