東 2024-07-20 01:24:27 |
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えっ……?
(今、私の名前呼んだ?聞き間違い?また心拍が速くなる。寝言……だよね?平をガン見していたことを自覚した私は、それがバレたんじゃないかって焦りながらおそるおそる寝顔を確認してみた。うん。まだ目瞑ってるし、やっぱ寝言だ。ホッとすると同時に、名前を呼ばれたという事実が嬉しすぎて頬が緩みそうになる。だって、寝言って完全に無意識じゃん。夢に出てくるくらい、私のこと考えてくれてる?いや、自惚れすぎか。さすがにこの状況で、立ったまま夢とか見ないよな。でも、寝てる時に眼中にない奴の名前呟くか……?平の頭の中に私なんか存在してないと思ってたけど、案外そうでもないのかな。平が私の隣で眠ってる時間が、名前を呼んでくれた瞬間が、私にだけ心開いてくれてるみたいで嬉しくてしょうがなかった。たとえそれが“友人”としてだとしても。
思えば“好き”って気持ちを自覚する前から、私は平を“友人”としても特別に思ってたんだろう。喋りかけやすくて、他愛もない話してじゃれ合うのが居心地良くて。平にはそれがナメ腐ってるように見えてたってのはマジ癪だけど。あの時ハッキリ否定しなかった私も私か。でも、今なら違うってよくわかる。平は私を利用したり、雑に扱ったりしない。それどころか、雑に扱われても何だかんだで許してしまう私の代わりに怒ってくれる奴。私が何かにモヤッててうまく言語化できずにいても、平の言葉はスッと入ってきて結局何度も救われてるんだよな。私にとっての平はそんな奴だから、変に気遣わずにいられる存在で……ナメ腐ってるんじゃなくて、信じてるから疑心暗鬼になる理由がないんだよ。私が好きになったのは、そーゆうめっちゃいい奴──。)
オイしっかりしろー。ほら降りるよ。
(うるさい胸元に手を当ててトキメキに浸ってたら、学校最寄り駅への到着案内が聞こえて我に返った。ちょうど平も目を覚ましたみたいだ。めっちゃ寝惚けてるけど。大丈夫か。ひらひらと平の顔の前で手を振りながら、平然を装って声をかける。言ってるうちに完全に車両が停止して、降りていく乗客たちを見ていたら何だかちょっと切なくなった。今日もこの時間、終わっちゃうな。あと何回一緒に通えて、どれくらい一緒に過ごせるんだろう。帰りの時間も合うといいな……やばい降りないと。密かに願いながら、下車を促すように平をちょんと肘で小突こうとした。)
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