東 2024-07-20 01:24:27 |
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当たり前……か。
(それはそうかもしれない――少なくとも東にとっては。
俺は今度は切り分けずにそのまま六等分になっているピザの一切れを摘んでそのまま口に運んだ。弾むような感触が心地よく口内で形を変えて茫洋と広がっていく。
――友達。
定義付けようとすると途端に曖昧になるのが人間関係だと思う。
〝友達〟なんてのはその最たるで、どうすれば友達か。
どういう関係なら友達かなんて人によって違う。
こっちが思っていても相手が思っていなければそれははたして友達なんだろうか。上辺だけで腹の底で嫌いあってる関係はどうだ。
彼氏、彼女のような契約に近い約束事でさえ軽々と破られてしまう世界で、もしかすると友達なんていうのはもっとも脆い関係なのかもしれない。『友達だろ?』なんて言われた日には急に怪しい風に思えてしまう。
それはきっと俺が捻くれた人間だからというだけではないだろう。)
……少なくとも中学時代の俺に伝えても信じちゃもらえねーだろうな。
お前数年後にあの東とメシなんか食ってんだぜって。
(イタズラめいて笑う東にほんの軽口を叩きつつピザを三切れ程も平らげてから背もたれにふぅと凭れた。なんだかんだ一度食欲を刺激すれば入ってしまうものなんだなと自分で感心してしまう。あんまり一人で食べ過ぎるのも具合が悪いので半分残した半月型のピザ皿を東の方へ軽く押しやって〝どうぞ〟の意を示す。
――やっぱ、そういう笑い方の方が似合ってるよお前は。
東が先程ちらりと携帯を一瞥していたのをみて時間を唐突に意識し出す。
別にこの後何かあるわけではないが東もそうとは限らない。確かに近づいていく別れの時間を少しだけ寂しく思いつつ――帰ったら待ち受けている勉強漬けに辟易と嘆息した。)
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