東 2024-07-20 01:24:27 |
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えっ……?
(絞り出した言葉はやけに真面目な声色で遮られてしまって、虚をつかれた私はポテトフライの皿を押し出した手を引っ込めることも忘れてキョトンと固まってしまった。そのまま平の話に耳を傾けるけど──何が“もういい”んだろう。全然よくないに決まってる。一人になったらまた後悔するとか、私の方がショックだとか……その言い方、平だって絶対あのこと気にしてるじゃん。)
…………。
(モヤッとした気持ちのまま、皿に伸ばしていない方の手で無意識に自分の頬に触れていた。“そういう風に笑うのはやめろ”って……私、どーいう顔してたんだろ。そんなの初めて言われた。いつも通り自然に振る舞ってたはずだし、いままではこーやって振る舞ってればたとえそれが空元気でも気付かれたことなんてなかったんだけどな。私、そんな変な笑い方してた?
平といると、私自身が気付かなかったことまで見透かされるような感じがするのは何なんだろ。あの日、ラウワン帰りに話した時もそうだった。私なんかよりよっぽど、他の誰よりも私のこと見てくれてるような気がして、たぶんそっからちょっとずつ平のこと意識し始めて──実際は、平がそーいうことにやたらと鋭いだけなんだろうけど。ちょっとしたことで自惚れそうになるの、いい加減何とかならんのか私は……。)
──よくない。約束したっしょ?なんか嫌なことあったら、愚痴聞くって。一人でごちゃごちゃすんの、平がよくても私がよくない。私が、気になるんだよ……。
(平からしてみたら、これも全部余計なお世話なのかな。だからもうこの話には触れてくれるなって突き放されてんのかもしれない。だけど、私にはどーしても平のことはもういいなんて思えなかった。平の言う通り、そりゃ私だってショックは受けてるけど……一番グサッときてんのは平を貶されて平に怪我させて、挙句に泣かせちゃったことに対してなんだから。
平の言葉にちょっと動揺しちゃったけど、私さえ良ければいいみたいな言い方に納得出来るはずがなかった。それが平なりの優しさなのかもしれないけど……私の頭の中はもう平でいっぱいで、私の感情と平の存在は切り離せそうにないんだよ──。一人になって後悔すんのわかってるなら、もっと頼ってくれてもいいのに。友達なんだから、今ここでガーッて愚痴ったっていいのに。平にとっての私って、それすら気軽に出来ないくらいちっぽけな存在なのか。悲しい?悔しい?……なんか寂しいな。私は俯いて、いつかゴストからの帰り道に交わした会話を思い出す。ポテトフライの皿に触れている手が震えてきて、思わずぎゅっと握りしめた。)
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