東 2024-07-20 01:24:27 |
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うわ……っ!
(揺れと同時に小さく悲鳴を上げながら、前方──つまり平に向かって勢いよく倒れ込んでしまった。かなりの衝撃を覚悟したのに、なんかぼふっ程度。ハッとして前を見ると、平のシャツ。左を見て、右を見る。平の左腕、平の右腕。上には平の顔──、
完全に平に凭れかかって、しっかり支えられていると気づいた瞬間。かぁぁっと顔中が火照ってきて、慌てて体を引こうとした。私とドアの間に挟まれてたし、私のカバンの重さも全部平にいってるはずだけど、怪我させてないだろうか。明らかに心配とか焦りだけじゃない胸の高鳴りを感じつつも、これ以上平を押し潰してしまう前にまず離れないと。
あーもう私、さっきから何やってんだ。完全に注目浴びちゃってるけど、なんかもうそこじゃない。私が浮つきすぎなんだ。そういや前にも似たようなことあったな。その時も平のこと考えてぼーっとしてて、階段下でぶつかって──てか平って、こんないい匂いしたっけ。あの日すれ違ったすげーいい匂いの子と、いよいよお似合いじゃん……。)
平、ごめ……だいじょーぶ?
(近くに立ってるおっさんが遠慮がちに「大丈夫ですか?」と声をかけてきたり、「非常停止ボタンが押されたため一時停止致します」という事務的なアナウンスが車内に流れてきたりする中、またしても私は別のことを考えながらおそるおそる平を見上げた。)
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