東 2024-07-20 01:24:27 |
|
通報 |
俺も使った事ねえなここ……つか歩道橋自体が久しぶりだわ。ガキの頃は当たり前に使ってたはずなんだけどな……。
(跳ねるように元気に前を行く東が振り返る。その表情はちょうど逆光になっていてよく見えなかった。それでも足取りと声音から面倒とは思っていなさそうでほっとした。
薄く伸ばした石造りの段差を二つ飛ばしでゆっくりと踏みしめる。階段というには細々とした起伏は一段ずつあがるには自分の歩幅と微妙に噛み合わなかった。これまで気にしたことはなかったが、もしかすると歩道橋とは子供向けなのかもしれないなと少し思った。ちょっとの信号でも全力ダッシュで歩道橋を駆け上がっていく子供時代の記憶。側道として自転車を手押しできるなだらかな坂もついてる。これ実は結構キツイんだよなつかうと……。
記憶を掘り起こすと筋肉痛がしそうだ。
当たり前にそこにあった子供時代。
俺がそうであるように、東にもあったはずだ。
……まるで想像できないが。
俺の知らない時間。俺の知らない、東。
元カレはそんな東も知っているんだろうか。
……当たり前か。
過ごした時間が俺とは違うんだから。
別にそんなのはわかっていたことだ。
大したことじゃない。
べつにたいしたことじゃ…………。)
……………………。
(前方をゆく東をみる。なにか。なにかが……もやぁっとしたなにかが。肺の奥のほうから積もってくるような感覚。知らず、俺は奥歯を噛み締めていた。
そもそもスダケンスダケンいうわりに元カレのアイツはスダケンに似てなくね?
好みっつーのは顔じゃねーってことか?
性格? スダケンの性格知らねえだろ。じゃなんだアレか。雰囲気か。いや雰囲気も似てねーわ。なんだコイツ。なにが良くてアレと付き合ってたんだ……。俺は意識せず舌打ちをして歩道橋の上り階段の最後の一段をあがりきった。)
| トピック検索 |