東 2024-07-20 01:24:27 |
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誰だ最初にのびってつけた元凶は。
けど私も気付いたらそう呼ばれてたし、言い出しっぺとか覚えてないわ。逆に、平は平以外の何者でもないよな~。
(一家揃って東アズ子とか東アズ美とかいう名前だったらフツーにやだな。勝手に想像してちょっと顔顰めたけど、私は東アズじゃないしべつに関係なかったわ。一瞬で自己完結した。たしかにいつの間にかみんなアズって呼んでるし、はたから見たら名前がアズみたくなってるのはそうかも。逆に平は、“平”以外の呼ばれ方してんの見たことない気がするな。あってもせいぜい“平くん”ぐらいか?それはそれで結局平だ。隣に並んで歩きながら、じーっと平を見上げてそんな事を考える。
ついさっきまであんなことがあってあんなに恋にも自信なくしかけてたのに、こーやって平とどうでもいい話をし始めるとすぐ楽しくなってくるんだからまったく不思議だ。さっきから何も状況は変わってないのかもしれないけど、平と話してるだけでびっくりするくらい気分が軽くなってくるのがわかる。こうして普通に並んで一緒に帰れてるのが今日はやけに嬉しくて、頬が緩んでしまいそうだ。単純すぎか、私。平に借りたハンカチの存在だって、実はずっと覚えてるけど何となく切り出せずにいる。さっさと返してしまったら、いよいよ別れる準備が整ってしまうみたいな気がして──もうちょっと。別れる間際に返そう。許されるなら、駅までの道のりをもっとゆっくり歩きたくなってくる。もう暗くなり始めてるし、そーいうわけにもいかないだろうけど。あー、なんかまだ別れたくないな……。)
……てかさ!腹減らん?ちな私は減った。平があずきとか言うから。
(衝動的にピタッと立ち止まる。思ったよりでかい声が出た。いや、さっきからいろいろあったし、ちょっと安心したら本当にお腹は空いてて……なんて、心の中で誰にでもない自分自身に言い訳しながら。勢い任せに出た言葉だから、ちょっと自分でも意味わからんとこあるけど。とくに後半。──とにかく、なんか気付いたら口走ってた。引っ込みがつかなくなって、何かの決め台詞を放った直後みたいに謎のキメ顔を崩せないまま平を見つめ続けた。)
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