東 2024-07-20 01:24:27 |
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……………おう、だから話題絞ってくれ頼むから。
(東――……と口を開きかけた瞬間の東の謝罪。ポンポンポンポンまーよく喋るコレだ。どんなツラして話すのが正解なんだ……とか俺が迷った機先を制された形だ。
どこから返したらいいのかわからない上に俺もどう話したもんかわからないからとりあえず落ち着けといいたい。俺自身にもだ。
東が俺の手をとる。
さっき、なんか痛むな……と手首をさすっていたところを見られたんだろう。言うほどのものでもないし、なにより今は――痛いほうが都合がいい。自分のしでかした事への贖罪にさえならないけれど、身体が痛むほうが心が痛いよりよほどマシなのだから。
俺は東の引く手をゆるりとはずして大仰に手をぷらぷらと振ってみせた。)
別に、たいしたことねーから。それより――……。
(ダセーとこみせちまったな。そう言おうとしたが、東の顔をみていたらなんとなくその言葉を飲み込んでしまった。
――ああ、やっぱりこいつはすげーな。
あんな事があって、もういつも通りでいられる。俺なんか正直すぐにでも駆け出して逃げ出して一週間くれー部屋に引きこもっていたいくらいなのに。
……いつも、どおり?
東の顔をみる。
思えば、いつもその笑顔に救われていた。
東の声が耳に届く。
気づけば、その声が安らげるものとなっていて。
東の向けてくれる優しさが身に沁みいる。
その優しさは、今も入るんじゃないのか?
今笑っている東は。本当に笑えているのか?
たとえば、俺が気にしないように無理して笑っているのだとしたら。
ふと、一陣の風が吹き抜けた。
風は風呂上がりの俺のボサボサの髪をまきあげて。東の横に流している髪を舞わせる事だろう。
俺は隠れてしまった東の表情を確かめたくて、手を伸ばした。その前髪の先に触れるように。)
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