東 2024-07-20 01:24:27 |
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……っ!
(私が何かを言い返すより前に、目の前で元カレが倒れ込む。ぎょっとする私よりも先に反応したのは友人③で、元カレに駆け寄って心配そうに顔を覗き込んだかと思えば泣きながら平や私を睨みつけ、サイテーとかスタッフを呼べとか騒ぎ始めた。私は、友人③のそのでかい声と周囲のざわめきでようやく状況を理解したけど──何も言えなかった。動けなかった。ほんとは私も殴られた元カレに駆け寄って、心配したり二人に謝ったりするべきなんだろう。正常な判断が出来る状況なら、私だってそうしてた。元カレが殴られる直前、平をバカにしたような事さえ言ってなければ──。
何も言えない私の代わりに必死に反論してくれる平の姿を見て、どんどん胸が苦しくなってくる。平だって散々ナメたようなこと言われてんのに、なんで真っ先に言い返すのがそこなんだ。……いや、平に元カレのことを話したあの日だってそうだった。あの日も平は私のために、怒らない私の代わりに怒ってくれてたんだ。)
平っ……!
(私は慌ててしゃがみ込み、脱力して泣き出してしまった平の背中をさすろうとした。殴るのはやりすぎかもしれないけど、そんなこと今の私が言えるわけない。だって──咄嗟に謝れなかった時点で、私だって相当元カレにムカついてたんだから。そうだ、私だって傷ついたしめちゃくちゃ怒ってた。だから殴られた元カレを見て、どこかスカッとした気分になってしまったんだ私は。なのに、平がこんなに怒ってくれるまでモヤモヤの正体に気付けないで穏便に済まそうとしてたとか……自分の疎さが、雑さ加減が逆に恥ずかしくなってきたくらいだ。
好き放題言わせてやり過ごそうとなんかしないで、私がもっとハッキリ言い返すべきだった。そしたら平だって、傷つくようなこと言われずに済んだかもしれないのに……こんな事のために、平が傷つく必要なんかないのに。私が言わなきゃいけなかったことを、平にやらせてしまった。巻き込んじゃって申し訳ないのにそこまでしてくれたことが嬉しくて、また平に救われたって思ってる私がいる。なんか私、いつも平に気付かされてんな……自分の気持ち。
ゾロゾロと人が集まってくる。寄って来ない人達も、みんなこっちを見てヒソヒソと何か喋ったりしてる。私はただ、こっからどう言い訳すればこれ以上平を巻き込まずに済むだろうってグルグル考えて──すぐにスタッフがやって来て、私らに声をかけてきた。)
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