東 2024-07-20 01:24:27 |
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(自販機の真ん前に立ってガン見しといて、飲みたい物がないって何なんだ……なんて、ツッコむ暇もなかった。意外な答えが返ってきたかと思えば次の瞬間にはもうどこかへ向かい始めた平に唖然として、反応が遅れてしまう。そっちは出入口──いや。これから帰るって考えたらたしかに大正解なんだけど、)
ちょ……平っ!そっちは──!
(さっきから気がかりだったことのせいで、思いっきり焦ったような声が出た。さすがに走るわけにはいかなくて、私も早足で平を追う。友人③はさっき出てったはずだから、まだいるとしたらたぶん出口の方向に──てか、歩くの早っ。こっちは追いかける気満々で追いかけてるのに、なんで全然追いつかないんだ。この早さ、明らかに平の方も逃げる気満々だろ。
他の客とすれ違いざまにぶつかりそうになって、謝っている一瞬の間にまた少し距離が開く。それにしたって平は、こんなに必死に一体何から逃げてるんだろう。追いかけながら平の背中を見て、そんなことを考えた。私か?私が時間過ぎたから怒って──ってのはさすがにないはず。遅れた私が言うのも何だけど、絶対そんな感じじゃなかった。さっき後ろから肩に触れた時、やけにビックリしてたし……やっぱ、中学ん時の友達に会うのが嫌なんだろうな。高校からかなり雰囲気変わった平が、昔の知り合いに会ってそのことを茶化されたりするのを憂う気持ちは私にも想像できる。ただ、それだけじゃないような……だって、ラウワンの時の顔色の悪さなんか尋常じゃなかった。今のこの状況だって普通じゃないし、平はもっと私が想像もできないような何かにビビってるのかもしれない。
──なんか、もったいないな。せっかく努力して、せっかく変わったのに。行く先々で知り合いに会う(かもしれない)度に、こーやって逃げながら過ごすとか。前にも似たようなこと平に言った気がするけど……オシャレになったんだから、もっと自信もっていいのに。急にグレたとかならまだしも、良い方に変わったんだから堂々としてりゃいいじゃん。私から見たら、平は何考えてるかわからん時あるけど人を見る目あってやさしいし、なぜかいつも傘持ってないけど考え方とかちゃんとしっかりしてて努力家だし、喋りやすくて一緒にいると落ち着くし──胸張れるだけの理由も魅力も、いっぱいあると思うんだけどなぁ。)
……あっ、
(追いかけるのに必死で気付かなかった。ってより、後ろから追ってるんだから平の死角は私の死角だ。突然現れた人物が、前を歩く平にぶつかりそうになったのを見て──予感的中すぎてギクッとする。私は、残りの距離を詰めようと全力で走り出した。)
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