東 2024-07-20 01:24:27 |
|
通報 |
とりあえず乾かすには乾かしたが……。
(ドライヤーの熱気を内包したシャツは実に暖かだったが時間もなかったのできちんと乾いてない気がする……。
熱気はあっても湿気が取れていないというか。これが冬場で詰襟だったらと思うと辟易する。まだシャツだけでよかった。ズボンも同様に落ち着かない感じになってしまったが元が黒い生地だから多少濡れていても目立つことはないだろう。帰ってからちゃんと洗って干せばいい。
そんな事を考えながら更衣室を飛び出したのは時間ちょうど。場所についていない事を考えるとフツー遅刻。男女通路の分岐点へたどり着いて視線を左右に巡らせる。東は――……いない。ふぅ、あぶねー……などと息を吐いてから近くにあったリラクゼーションチェアに腰を下ろした。ゆったりとした背もたれに体重を預けると若干の違和感。やはりシャツはしっかりとは乾いていないようだ。まあいい。視線を女子通路の方へと向ける。ここからなら東が出てきてもすぐ見える。……なんか女子通路をじっとみてるって微妙じゃね? 俺はなんとなく後ろめたい気持ちで視線をそらそうとして、たまたま出てきた女子にギョッと目を剥いた。元中の同級生。それも東がどうこう言ってたヤツじゃねーか? 俺はバッと下を俯いて額に手を当てた。てーことはさっきサウナ入っていった男はツレのやつか……?
大丈夫か、東のやつ……鉢合わせてねーならいいけど。
…………?
あれ、俺いま東の心配したか……?
あんな『地元のダチ、おれらマジ最強』とか自撮り写真撮ってそうな連中に自分が見つかって『なにおまえその格好高校デビュー?www』『ウケる中学のときチーズ牛丼好きそうだったのに笑』とかなんとか言われるよりも……?
ちょっとまて落ち着こうダメだ。
椅子から立ち上がって隣に屹立している自販機の前に立つ。九割牛乳類。ひでぇな。ウインドウをぼんやりとみつめながら、残りの一割の飲料に想いを馳せる。
この前のボーリングの時も思ったことではあるが、つくづく東と俺とでは棲んでる世界が違う。まるで俺には理解の追いつかない関係性。でもらあっちのほうが大多数。よく一緒にいられるよな……いや、そんな東だから俺なんかと一緒でも気にしないんか……。はあ、とでかいため息をついた。売り切れランプがこうこうと灯るコーヒー牛乳が少しだけ飲みたくなった。)
| トピック検索 |