東 2024-07-20 01:24:27 |
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(急いで濡れた身体を拭き、一旦館内着に着替える。洗濯物を取りに行く前に髪を乾かそうと、ドライヤーが備え付けてある鏡の前へ移動する──と、さっきすれ違ったばかりの友人③が端の席に座って髪を乾かしていた。ほぼ同時に向こうも人の気配に気付いたみたいで、こっちを見て一瞬気まずそうな顔をしたかと思えばわざとらしい笑顔で『アレ?東?偶然~。』なんて話しかけてきた。)
うぃーす。ラウワンぶりだっけ~?
(……って。普通に隣に座りながら手まで振って返事しちゃったけど、これでよかったのか私。さっき私に気付かないふりして出て行こうとしてたのも、私の顔見た瞬間嫌そうにしてたのも気付いてるのに……でも、別にこの子のこと嫌いってわけじゃないし、友達だしなぁ。結局そのまま私も髪を乾かし始め、案外普通に話せるもんだなぁなんて考えながら当たり障りのない言葉を交わし、先に乾かし終わった向こうが立ち去っていった。“んじゃまた~。”なんて空いてる片手を振りながら、以前平に言われた言葉が脳裏を過ぎる。やっぱ今のコレも私、雑に扱われてんのかな。たしかに白々しかったけど……だったとして、どんな反応するのが正解だったんだろう。平なら、怒れってまた言うのかな。でも、怒るって今更……?
正解はわかんなかった。結局何も変わらない反応しちゃったや。でも、あの日平に言われなかったらこーやって疑問を抱くこと自体なかっただろう。心のどこかでは引っかかったまま、ちゃんと考えずにうやむやにして──やっぱ平ってすごいよなぁ。何でもなんとなくで許してしまう私と違って、いろいろしっかり考えてるっていうか。私の扱いが雑な私よりずっと、私にやさしくしてくれるっていうか──考えてたら、いつの間にかすっかり髪は乾ききっていた。
ハッとして急いで洗濯物を取りに行き、綺麗になった制服に着替えてから手早くスキンケアやメイクを済ませていく。ポーチに付けているキーホルダーが目に留まると、またドキッとした。さっきの傘といいキーホルダーといい、思い出すだけで心臓が暴れてしまって煩い。アレが欲しいとかコレが欲しいとかねだられた事はあっても、こーいうの貰って胸がきゅんとするのは初めてかもしれない……。
友達と話し込んだりぼーっとしていたせいか、更衣室を出る頃には約束の時間を2分ほど過ぎていた。最悪だ、もっと早く時計見てればよかった──私は荷物をまとめ、小走りで平と別れた場所に向かった。)
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