東 2024-07-20 01:24:27 |
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笑うなしー。いや、昨夜暗記した年号がね?丁度あの瞬間に呪いの呪文みたくブワッて──
(笑うなとか言いつつも、平の笑いにつられて私の頬も自然と緩んだ。やっぱ独特だよな、笑い方。でも和むっていうか、気が抜けてちょっと落ち着く。平といるとドキドキするけど、やっぱ根本的に居心地いいんだよな。やっと言い訳できそうな余裕も出てきたし、この流れで嫌いな暗記科目に呪われかけた事にでもしとくか。形だけの抗議をするために顔を上げ、平に向き直る。
え、近っ。ってそりゃそうか。近いとか以前にまだ手、しっかり握られたままだし。喋りながら身振り手振りしようとして平の手を改めて意識し、触れている箇所を見下ろす。人混みのせいか平のせいか、なんか暑い。これ、いつまでこのままなんだろう。気になるならこっちから離せばいいだけの話なのに、離す理由もきっかけも特になくて──ぶっちゃけ、なんかもったいなくて。平が遠くの大学に行ってしまうとか、いずれ離れ離れになってしまうとか。そんな将来の不安も今だけは全部吹っ飛んでしまうくらい幸せで、大袈裟かもだけどこのまま時間止まれって本気で思った。こんなに周りに人がいるのに私、平のことしか考えてない。だから、あえて。ズルいかもしんないけど、気付いててもこの手について何も言わなかった。言えなかった。この時間が終わったら、また“普通”に戻って。ちゃんと気持ち抑えて、全部隠し通すんだから。こんくらいは、いいよね?お願い。平が気付くまで、もう少しだけこのままで──無意識に、ほんの一瞬。繋がってる方の手に力を込めてしまった。)
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